原題“Pomp and Circumstance”は、
シェークスピアの「オセロー」に出てくる主人公の台詞
“Pomp and circumstance of glorious war”から採られたもので、
小田島雄志氏はこの部分を、「輝かしい戦場における一切のもの、その誇り、壮絶な風景」と訳されていますが、
これを『威風堂々』としたのは、ミリタリーマーチとして、まさに秀逸なものと感じます!
とりわけ有名な第1番の中間部は、
時の国王エドワード7世がいたく気に入り、歌詞を付けるようにエルガーに要請したため、
王の意向を汲んで、翌年に『戴冠式頌歌』を作曲、
第1番の中間部をそのまま用いた終曲に、詩人アーサー・クリストファー・ベンソンが、国家と王を讃える「希望と栄光の国」という詩を付けました。
1901年に完成してから110年が過ぎたこの曲ですが、
TVのブロムスの中継で、民主主義国家イギリスの観衆が、誇らしげな表情で国旗を振りながら高らかに歌っている姿をみると、
経済的な苦境の中にも、誇るべき文化を有するこの国の人々が、ふと羨ましく思えるのです…。
今日エントリーする演奏は、ショルティ指揮するロンドンフィルによる演奏です。
どの曲を演奏するにしても、楽器をよく鳴らして、オーケストラの機能やダイナミックレンジを最大限に生かす剛腕ぶりを発揮するショルティですが、
その一方では、従来の習慣に迎合することなく、楽譜に書かれていないプラスアルファの解釈をすることがなかったと言われています。
しかし『威風堂々第1番』の演奏、
特に「希望と栄光の国」が弦楽器によって歌われる部分では、
曲を大きく盛り上げるために、随所で思いきったリタルランドを多用!
剛腕ショルティが肩の力を抜いて、感興の赴くままに自らも楽しむような趣が感じられます!
第2〜5番の演奏では、そういった演出が(多分)なされていないだけに、余計にこの演奏の伸びやかさに魅力を感じます。