最近聴いたCD

W.A.モーツァルト:フルート四重奏曲第3番 K.285b

バルトルド・クイケン(フルート・トラヴェルソ) ジギスヴァルト・クイケン(Vn)
ルシー・ファン・ダール(Va)ヴィーラント・クイケン(Vc)


1777年、マンハイムに滞在していた21歳のモーツァルトは、ドジャンというフルート愛好家から、フルートのための協奏曲と四重奏曲を書くように依頼されました。

ただ当時のフルートは構造が不完全で、正しい音程をとることが難しかったらしく、今一つ気乗りしなかったようですが、

就職口を探すためにパリまでの旅費を必要としていたモーツァルトは、その費用を稼ぐために止むを得ず作曲に取り組み、

2曲の協奏曲と4曲の四重奏曲(k.285、285a・b、k.298)を完成させたと言われています…。


今日エントリーするフルート四重奏曲第3番ハ長調(k.285b)は、

第1楽章のスケッチの一部が、後の1792年に完成された歌劇『後宮からの誘拐』のスケッチに含まれているとか、

第2楽章は、1784年に書かれたセレナード第10番『グラン・パルティータ』の第6楽章と全く同じであるなど、

この時期に作曲されたものかどうかについては、未だ明確に実証はされていないようです…。


今から17〜8年前に、輸入CD専門店でイギリス製のQUAD ESL-63proというスピーカーから流れていた、

ベルギーの古楽器奏者のパイオニアのバルトルド・クイケンのフルート・トラヴェルソの音色を聴いて以来、この演奏のファンです。

この時に聴いた、鄙びた響きの中に聴き取れる素朴で雅な味わいの音色は、未だに忘れることができません。

残念ながら、我家ではこの時の響きを再現することは叶いませんが…。

一般的には、ヴィブラートをかけずに弦を弾く古楽器奏法には、時に演出過剰と感じるものがあり、正直あまり馴染めない私ですが、

クイケン兄弟たちによるモーツァルトの演奏は、

フルート・トラヴェルソのもつ素朴な雅やかさを最大限に活かすべく、深い見識に支えられたもの。

モーツァルトの曲が持つ素朴な味わいに耳を傾けることができる、類稀な演奏だと思いますが、

中でもこの第3番、特に第2楽章の変奏曲の持つ味わいの深さは、秀逸なものだと感じました。

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