最近聴いたCD

エルネスト・ショーソン:交響曲 変ロ長調 

ポール・パレー指揮  デトロイト交響楽団


多感な青春時代には、家庭教師の影響を受けてパリのサロンに出入りし、

様々な知識人や芸術家と交際していたショーソン(フランス:1855-1899)でしたが、

当初は両親の希望通りに、法律を学んで弁護士の資格を得ました。

しかし芸術、とりわけ音楽への熱意は冷めやらず、両親の許可を取り付けて25歳でパリ音楽院に入学。

最初はマスネ、次いでフランクに師事し、強い影響を受けました。

裕福な中産階級の家庭に生まれ育ち、順風満帆な結婚生活を送っていた彼でしたが、

繊細な心の深奥には19世紀末が醸す不穏な雰囲気を感じ取ったペシミズムが澱んでいたかのように、

代表作『詩曲』を始めとする彼の作品には、茫漠とした不安や、鬱々とした倦怠が色濃く反映されています。

40歳代の半ば、別荘で弦楽四重奏を書きあげているさなかに、

パリから到着する妻子を自転車で駅に迎えに行く時に、玄関の門柱に激突して即死するという不可解(と言われる)な結末を遂げましたが、

そんなことを彼の作風と結びつけることは、無理があるのでしょうか…。


今日エントリーするのは、1889〜90年の30歳代半ばに書かれた、彼の唯一の『交響曲 変ロ長調』。

ポール・パレー指揮するデトロイト交響楽団による演奏です。

第1楽章は、葬送行進曲を思わせるティンパニが不気味に響く中、胸かきむしられるような悲しみの音楽で開始されますが、
突然視界が開けて、晴れやかな紺碧の空が現れたかのように展開されるのどかで大らかな音楽は、地中海の大海原を連想します。
陽射しが雲に遮られるように、時折淡いメランコリーな瞬間が訪れますが、全体的には推進力に富んだ前途洋々とした音楽です。

第2楽章は、前楽章とは一変した、救われることのないような悲しみに支配された音楽です。
パレーの演奏で聴くこの楽章は、いかなる安らぎも寄せ付けないような孤独感に覆われたもの。
作曲者の心の病(?)が反映されたのではないかと、そんな思いが、ふと心を過ぎります。

第3楽章冒頭は、嵐の中を突き進むように戦闘的で勇壮な音楽。
この部分も、第2楽章との繋がりから考えるとあまりにハイテンションで、その落差の大きさは、私には不可解に思えてしまいます。
その後、第1楽章の主題が回帰し、神の祝福を受けるような穏やかさに包まれて、静かに曲は終わります。


楽章間の繋がりという点で、私にはどうも判り難く感じられるために、このような文章を書いてしまいましたが、

個々の楽章ごとにみると、本当に素晴らしい音楽だと思います。

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