知られている限りでも90曲を越える歌劇を作曲していますが、
代表作『セヴィリアの理髪師』は、それまでのイタリアオペラ特有の甘美さに加えて、
登場人物の性格的な描写や、オーケストラの劇的な用法に傑出しており、
その人気は全ヨーロッパを席巻することになりました。
しかし奇遇にも、パイジェッロが亡くなった年に、同じ台本を使って作曲されたロッシーニの同名オペラが登場したことによって、
その名声は音楽史の中に埋没してしまうという宿命に晒されました。
ところで、彼はオペラ以外にも多くの宗教曲、12の交響曲などを書いていますが、
今日エントリーするのは、全8曲からなるピアノ協奏曲全集。
その昔、CDショップのワゴンセールで、作曲者の名前すら初耳であったにもかかわらず、ジャケットの風景画に惹かれて購入したものです。
購入してすぐに聴いた時には、「何とメリハリのない退屈な曲だろう」と思い、そのままCD棚に眠ったままでいたのですが、
先日何気なく聴き始めて、その屈託のない伸びやかな美しさと、
宝石のように光り輝くピアノの音色に惹かれて、
予期せぬことに、2時間以上にわたって全8曲を聴き終えてしまいました。
例えば第1番協奏曲の第1楽章などは、同じ旋律が展開もされずに繰り返されるのですが、
何故かそんな冗長さすらがこの曲の特長と思えてしまうほどに、屈託なく大らかな気持で楽しめる音楽です。
どんなにへまやどじをやろうとも、疎んじられたり憎まれることなく、いつも仲間内の中心にいて愛される、
ついそんな昔の友人を思い出してしまった、超癒し系の音楽。
モネッティのピアノの際立った美しい音色!
調べてみると、彼女はパイジェッロに繋がる家系に生まれたとのこと。
「さすがに血は争えない!」と思うのは、ちょっと考え過ぎでしょうか。