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C.サン=サーンス:交響詩『ヘラクレスの青年時代』 

シャルル・デュトワ指揮  フィルハーモニア管弦楽団


サン=サーンスは、ベルリオーズやリストというロマン派の中でも最も華麗な音楽を書いた二人から強く影響を受けたと言われています。

彼の4曲の交響詩は、リストの交響詩に倣って、

『オンファールの糸車』=誘惑
『ファエトン』=誇り
『死の舞踏』=死の恐怖とアイロノニー
『ヘラクレスの青年時代』=英雄主義と性的な快楽との煩悩

以上のように、各曲それぞれにテーマを標榜して作曲されています。


今日エントリーする『ヘラクレスの青年時代』は、彼が42歳だった1877年、交響詩の中では一番最後に書かれた、最も規模の大きな作品です。

概ね3つの部分から構成された単一楽章のこの曲は、

タイトルからも推察できるように、ギリシャ神話を題材としたもので、

最も偉大な英雄とされるヘラクレスが、若き日に快楽と美徳の分かれ目に直面しますが、

様々な誘惑を乗り越えてた報いとして不死の存在としてオリンポスの神々に迎えられまでを描いたもの!


各部分の具体的な内容についてはライナーノートにも記載されておらず、曲を聴きながら物語の展開を想像しています…

第1部は、爽やかな大気の中に漂う仄かな官能は、幼少時から並はずれた力を有するヘラクレスを取り囲む様々な甘い誘惑を感じさせるもの。
この爽やかさと仄かに漂う官能は、ボッチチェリーの名画『春』を音楽にしたような印象が実感できます。
サン=サーンスの音楽の持つ美しさがフルに発揮された、素晴らしい場面です!

第2部は、悪徳への誘惑を感じさせる不穏な雰囲気で開始され、
エキゾティックな艶めかしい酒宴を思わせる場面が展開されます。
同時期に作曲された、歌劇『サムソンとデリラ』の「バッカナール」の音楽との関連が、指摘される場面です。

第3部では、様々な誘惑に煩悶しながらも打ち克った心の英雄の誕生を祝う、華やかで堂々とした音楽が…。


デュトワの指揮はエレガントさが優先され、力強さには欠けるように思えます。

そかし、色彩豊かなオーケストラの美しい響きの中に感じられる品の良い(?)官能美が魅力的なこの演奏は、お薦めです!

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