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I.ストラヴィンスキー:『プルチネルラ』組曲版 

ギュンター・ヴァント指揮  北ドイツ放送交響楽団


ルネッサンス期の作曲家スカルラッティの曲をアレンジしたバレーで成功を収めたロシアバレー団の総帥ディアギレフは、

同時期の作品をアレンジしたバレー音楽を書くように、ストラヴィンスキーに作曲を依頼しました。

この大恩人の依頼に対し、ストラヴィンスキーは1917年にピカソとともに訪れたナポリで観た、イタリアの伝統的風刺劇に登場する道化師「プルチネルラ」を題材として用い、

ペルゴレージ等バロック期のナポリ学派の舞曲を大胆にアレンジして作曲したのが、今日エントリーした作品です。


出世作『火の鳥』『ペトルーシュカ』『春の祭典』等とは全く作風は異なり、

現代的な作曲技法こそ用いられているものの、古典的で親しみやすいこの曲を聴くと、

ストラヴィンスキーという人は、恩義に厚いのか、はたまた世渡りが巧みなのかなどと、つい考えてしまいます…。

ことの真偽はともかくとして、バレー音楽『プルチネルラ』は、

”後期ロマン派や印象主義音楽へのアンチテーゼとして登場した「新古典主義音楽」の理念の提示に成功した最初の作品”、

そんな評価を獲得しました。

尚、初演時の衣装や舞台セットのデザインは、ピカソに委託されました。


今日エントリーするのは、G.ヴァント指揮する北ドイツ放送交響楽団による演奏で、1944年に作曲家自身により構成された8曲から成る組曲版。

ルネッサンス期の音楽にエスニックな味付けが施されたようで、最初は違和感を覚えたものですが、

ストラヴィンスキーのアレンジによって、ルネサンス音楽の持つ雅さに加えて、民族的な旋律の素朴さや躍動感が鮮明に表出され、

聴いているうちに、得も言われぬ深い味わいを有する音楽と思うようになりました。

新古典主義音楽とはどんなものかが一聴して理解できる、そんな作品と思えます。

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