今日エントリーするのは、同じ名称でもBWV538の方で、
「ドリア調」と呼ばれて区別されています。
ところで「ドリア」の意味ですが…
西欧中世の教会音楽は、古代ギリシャの旋法(=音階を形成する一定の音組織のこと)理論から引き継がれた8つの旋法からなっているそうで、
ドリア旋法とはその中でもっとも重要なもの。
古い記譜法に倣って楽曲の調を示す記号が書かれていなかったために、この名で呼ばれるようになったようですが、
実際にはドリア旋法は使われていないそうです。
この演奏は、シュトックマイヤーのバッハオルガン曲全集の中でも、屈指の名演奏だと思われます。
トッカータ部に迸る情念の横溢は、私自身の心のありようによって、聴くたびに感慨は異なってくるのです。
ある時には社会の不条理への怒りを、
ある時には言いしれぬ哀しみを、
そしてある時には懐かしい想い出や、青春時代の憧憬を、
そんな様々な感慨が湧きあがってくる、稀にみる奥深い内容を湛えた演奏と感じています!
フーガ部は、提示される主題と、それに対する応答の弛緩することのない滔々とした流れが次第に高まり、
圧倒的な高揚感を伴なって、終結へと導かれます!
有名なBWV365を遥かに凌ぐバッハの名作を、シュトックマイヤーが渾身の力で表現した素晴らしい演奏だと思います。