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A.ドヴォルザーク:序曲『自然の中で』 

アンタル・ドラティ指揮  ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団


明けましておめでとうございます。

猛暑を始めとして、集中豪雨・竜巻・突風等の異常気象にたたられた昨年でしたが、

せめて自然だけでも穏やかな一年であって欲しいと願い、新年第1曲目は、ドヴォルザークの序曲『自然の中で』をエントリーします。


1891年、50歳を迎えたドヴォルザークは「自然」「人生」「愛」をテーマにした作品を着想しました。

たまたまその年の春に、ニューヨークのナショナル音楽院から破格の条件で院長職への就任を懇願されており、

故国を離れるかもしれないとの思いも、作曲の動機となったのかもしれませんが…、

いずれにしても人生の一つの節目として、祖国の自然や人々の生活をテーマにした『自然の中で』『謝肉祭』『オセロ』という3つの序曲が書き上げられました。

『自然の中で』は、ドヴォルザークが幼い頃から親しんできたボヘミアの、ある日の夜明けから黄昏時までを切り取ってスケッチしたような作品。


ドヴォルザークの作品では、渡米後に先住民の音楽にからインスピレーションを得て作曲された作品、

即ち『新世界交響曲』『弦楽四重奏曲第12番』『チェロ協奏曲』等が代表作として知られているだけではなく、

その分野を代表する名曲として広く愛聴されていますが、

直前に書かれたこの作品は、これらの有名曲とは異なり、ボヘミアの土の香りのする田舎の自然を髣髴とさせる音楽。

一聴すると、望郷の念を訴えるような哀愁溢れる旋律もなく、感涙にむせぶような作品ではありませんが、

じっくりと耳を傾ければ、鳥の声や梢を渡る風の音に対し、言いしれぬ親しみと感謝の気持ちが聴き取れる佳曲だと思います。


ドラティ指揮するロイヤル・コンセルトヘボウは、穏やかな親しみに溢れた滋味深い表現で、この佳曲の魅力を余すところなく引き出した名演!

1986年にCD2枚組で発売された『我が祖国』の余白を埋めるために録音されたと推察されるこの演奏ですが、

CD1枚に80分収録が当たり前になった現在、この名演が再発売されなくなり、耳にする機会が殆どなくなったことは、何とも残念に思います。

今年は自然の脅威に怯えることなく、穏やかな気持で過ごせる年であることを祈念して、新年第1曲目のエントリー曲にしました。

今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

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