最近聴いたCD

ガブリエル・フォーレ:歌曲『夢のあとに』op.7-1

ナタリー・シュトゥッツマン(アルト)  カトリーヌ・コラール(ピアノ)


フォーレの全作品中で最も耳にする機会が多い曲と言えば、おそらく歌曲集『3つの歌』op.7-1の「夢のあとに」ではないでしょうか。

詩の内容は、

“夢うつつの中で恋しい人と共に天空をさまよったひと時は、目が覚めるとともに儚く消えてしまった。そんな幸せな時を、もう一度!”

そんな思いを希求する、切ない心情を歌ったものです。

フォーレならではの儚さが漂う美しい旋律は、オーケストラ曲として、或いは独奏チェロ、ヴァイオリン、フルート版などに編曲されて、コンサートはもとより、ドラマの挿入曲としてもしばしば耳にすることがあります。


中でも最も印象に残っているのが、倉本聰脚本のTVドラマ『北の国から』のスペシャル編で、主人公の娘“蛍”の演技のバックに使われた時(‘95秘密〜だったと思います)。

勤務する病院の医師と不倫関係に陥り、同棲して子を身籠るが、

結局はそのことを告げずに身を引き、一人で子を産む“蛍”の心情を際立たせたこの曲、

再放送された時も含めて、何度となく泣かされたものでした。


大好きなドラマでしたので、ついつい熱が入ってしまいましたが、それはさて置いて…。

今日エントリーするのは、シュトゥッツマンが歌ったディスクです。

ビロードの肌触りを思わせる温かみのある深々とした低音部、気品高い繊細な表現の高音部、

言葉の意味は理解できない私ですが、発音の美しさが心に沁み入ってくるようです。

心もとなく揺れ動く心情よりも、毅然とした強さの中に諦観が垣間見れて、素晴らしく魅了的な音楽と思えます。

ドラマの影響で、少々偏った感想かもしれませんが…。

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