最近聴いたCD

C.フランク:交響曲二短調 

カルロ・マリア・ジュリーニ指揮  ベルリン・フィル


ロマン主義華やかなりし19世紀、ドイツやオーストリアでは優れた交響曲が次々と誕生していましたが、

その頃のフランスでは、パリの社交界を中心にオペラがもてはやされていたために、

ベルリオーズを除くと、特記すべき作品は殆ど書かれていません。

しかし1870〜71年にかけての普仏戦争の敗北によって社会状況が変化し、

華やかなオペラよりも、むしろ純粋な器楽作品に力が注がれるようになりました。

この曲は、フランク(1828〜90)晩年の1886年に着手・完成されたと言われ、サン=サーンスの交響曲第3番と並んで、フランスロマン派の代表的な傑作交響曲と言われています。


この曲、LP時代の作品評には、必ずと言ってよいほどに「難渋」「陰気」「深い精神性」といった内容の言葉が並んでいたように記憶しています。

私は、高校生時代にフルトヴェングラーの演奏で初めてこの曲を聴き、その壮大なロマンと瞑想に嵌ってしまいました。

そのためか、他の演奏が、それこそ「難渋」「陰気」なだけの音楽と感じられて、長らく受け容れることができなくなってしまいました。


今日エントリーしたジュリーニ/ベルリン・フィルの演奏は、1986年に録音されたもの。

一音一音を慈しむように表現する第1楽章冒頭部、
やがて曲が高揚し、宗教的なほぷ悦感を噛みしめるように奏される、第2主題「信仰の動機」!

弦のピッチカートとハープに支えられてイングリッシュホルンが奏する、寂寥とした心情を湛えた響き、
トリオ部のざわめきは、京都嵯峨野の竹林に吹く晩秋の風の音を思い出すような風情の音楽です。

終楽章冒頭は、一転して力強く疾走するような音楽。第2楽章主題や、第1楽章の動機を回顧しながら、輝かししく終結へと突き進む音楽です。


ジュリーニの演奏をエントリーしたのは、フルトヴェングラーを聴いた時のように、強い説得力に呑み込まれるような、圧倒的な感動に包まれたからではありません。

曲の持つ限りなく奥深い魅力を豊かな説得力で語ったような、そんな客観的な演奏に惹かれたもの。

この演奏を聴いてからは、フルトヴェングラーの呪縛から解放され、様々な解釈を楽しめるようになりました。

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