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A,グラズノフ:交響詩『ステンカ・ラージン』 

コンスタンティン・クリメッツ指揮  モスクワ交響楽団


今日エントリーするグラズノフの交響詩『ステンカ・ラージン』は、20歳の時に書かれた作品。

前年にF.リストの尽力によって交響曲第1番が初演された際に知遇を得て、彼の交響詩に倣って書かれたようです。


ステンカ・ラージン(1630-1691)とは、ウクライナや南ロシアに生活していた軍事的共同体コサックの指導者。

1654〜67年にロシアとポーランドでと闘われた戦争(13年戦争)が長引き、そのために民衆に対する徴税・徴兵の負担が一層強化されたために、食うや食わずのどん底の状態に陥りました。

そんな貧困に苦しむ人々を救済するために、支配者である王侯貴族や官僚に反旗を翻し、彼らからはもとより、ペルシャにまで出向いてまで略奪行為を行ったラージンを、

ロシアの民衆が救世主と崇めたことは、民衆にとってはいかに悲惨な社会情勢であったかが、推し量れるように思えます。

この曲は、そんなラージンの英雄としての側面を謳い上げた音楽です。


冒頭、低弦の奏する鬱々とした暗闇の底から、トロンボーンによってロシア民謡『ヴォルガの舟歌』が奏されますが、これは圧政下で厳しい労働を強いられた人々の労働歌。

この民謡をテーマにして、ラージンの進軍の様子が描かれた、ロシア国民学派の香りに満ちた一種の変奏曲のような作品です。

途中、略奪したペルシャの姫を表わす(のであろう)旋律は、リムスキー=コルサコフを髣髴とさせます。


この曲、ネットで検索していると、何とフルトヴェングラーがベルリンフィルを1938年に指揮した録音を発見!

冒頭部の、歴史の暗部を如実に表現したような凄絶な演奏に、度肝を抜かれてしまいました!

それには及びませんが、クリメッツの演奏は、ロシア色に溢れたもの。

十二分に楽しめるものだと思います!

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