そんな特徴を有する音楽ですが、曲によってはイギリス民謡に何かが色付けされたような不思議な魅力を感じることがあるのですが、
つい最近になって、パリでラヴェルに師事し、音色のニュアンスや表現の彩を譜面化する術を学んだことが曲に反映されていることを知って、「成程!」と合点した次第!
今日エントリーする弦楽四重奏第1番は、ラヴェルに師事したすぐ後の1909年に書かれたもので、
随所にイギリス民謡や舞曲を彩るかのように、印象派の響きが聴かれるユニークな作品です。
第1楽章の懐かしさを感じさせる民謡風の旋律は、大地の枯れ葉を舞い上がらせる風を思わせるようで、
上田敏や堀口大学の訳で馴染み深いヴェルレーヌの詩を髣髴させるような、秋色に彩られた音楽!
第2楽章は力強い民族的な舞踊なのですが、対照的に生真面目なトリオ部も含め、エスプリに富んだ味わいが感じられて、ちょっと不思議な感慨が湧いてきます。
第3楽章は、果てしなく続くヒースの原野に忍び寄る黄昏時、遠くから聞こえてくる牧笛の音色が、言いしれぬほどのノスタルジーを醸しだす、穏やかで美しい音楽。
ヴィオラの奏でるメランコリーな旋律が印象的な中間部を挟んで、土俗的でエネルギッシュな力が漲った第4楽章。
我々日本人好みの旋律に加えて、独特の瑞々しいリリシズムが感じられるこの音楽、一度お聴きになってはいかがでしょうか。
エントリーしたディスク以外にも、未聴ですがナッシュ・アンサンブルやメディチ四重奏団の演奏が入手できるようですので、室内楽好きな方は是非!