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セルゲィ・プロコフィエフ:
スキタイ組曲『アラとロリー』 

アンドレ・プレヴィン指揮  ロス・アンジェルス・フィル


1914年にサンクトペテルブルグ音楽院を卒業したばかりのプロフィエフ(1891-1953)は、

旅行先のロンドンで、『ピアノ協奏曲第2番』を聴いた当代随一の興行師ディアギレフに才能を認められてバレー音楽を書くように勧められました。

スキタイに伝わる民話を題材にしたバレー音楽『アラとロリー』を構想しましたが、

スケッチを見たディアギレフから、1913年に初演された『春の祭典』の二番煎じと評され、上演を拒まれたために、バレー化を断念。

4曲からなる『スキタイ組曲』として出版されました…。

輸入盤のライナーによると、太陽神ヴェレスの娘アラが、地下の邪教神チュジホングのために危機に陥るが、若い戦士ロリーに救われて、二人は結ばれるという筋書き…。


第1曲「太陽神ヴェレスとアラへの讃仰」
 土俗的で、野生の凶暴さに満ちたエネルギー感溢れる冒頭部は、スキタイ人の太陽信仰を表現したもの。冷ややかなフルートの音色は、狼の遠吠えのようにも聴こえますが、神秘的なアラの姿を表現しているようです。

第2曲「邪神チュジボーグと魔界の悪鬼の踊り」
 戦闘的なエネルギー感と悪魔の狂乱を髣髴させる舞曲!まさに『春の祭典』を髣髴させる音楽です。

第3曲「夜」
 荒涼とした世界に降り注ぐ月の光!呪術的な雰囲気を湛えた音楽です。クライマックスの凶暴さは、邪神チュジボーグがアラを襲う場面の音楽。

第4曲「ロリーの栄えある門出と太陽の行進」
 行進曲風に開始され冒頭は、邪神との戦いに向かうロリーを表わすもの。引き攣るような悪魔の哄笑や、地獄に吹きすさぶ風を髣髴されるような音楽を経て、ロリーが勝利し、内面から滲み出るような感動がこみ上げてきます。


ロシア・モダニズムの旗手として、「鉄と鋼で出来た」と言われるハードな音楽を書いていた初期の作品。

プレヴィンの指揮で聴くこの音楽は、そんな精神を尊重しつつも、冷徹なリリシズムが感じられる演奏。

最初は“耳触り”と感じられるかも知れませんが、耳慣れるにしたがって惹きこまれていくディスクだと思います。

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