旅行先のロンドンで、『ピアノ協奏曲第2番』を聴いた当代随一の興行師ディアギレフに才能を認められてバレー音楽を書くように勧められました。
スキタイに伝わる民話を題材にしたバレー音楽『アラとロリー』を構想しましたが、
スケッチを見たディアギレフから、1913年に初演された『春の祭典』の二番煎じと評され、上演を拒まれたために、バレー化を断念。
4曲からなる『スキタイ組曲』として出版されました…。
輸入盤のライナーによると、太陽神ヴェレスの娘アラが、地下の邪教神チュジホングのために危機に陥るが、若い戦士ロリーに救われて、二人は結ばれるという筋書き…。
第1曲「太陽神ヴェレスとアラへの讃仰」
土俗的で、野生の凶暴さに満ちたエネルギー感溢れる冒頭部は、スキタイ人の太陽信仰を表現したもの。冷ややかなフルートの音色は、狼の遠吠えのようにも聴こえますが、神秘的なアラの姿を表現しているようです。
第2曲「邪神チュジボーグと魔界の悪鬼の踊り」
戦闘的なエネルギー感と悪魔の狂乱を髣髴させる舞曲!まさに『春の祭典』を髣髴させる音楽です。
第3曲「夜」
荒涼とした世界に降り注ぐ月の光!呪術的な雰囲気を湛えた音楽です。クライマックスの凶暴さは、邪神チュジボーグがアラを襲う場面の音楽。
第4曲「ロリーの栄えある門出と太陽の行進」
行進曲風に開始され冒頭は、邪神との戦いに向かうロリーを表わすもの。引き攣るような悪魔の哄笑や、地獄に吹きすさぶ風を髣髴されるような音楽を経て、ロリーが勝利し、内面から滲み出るような感動がこみ上げてきます。
ロシア・モダニズムの旗手として、「鉄と鋼で出来た」と言われるハードな音楽を書いていた初期の作品。
プレヴィンの指揮で聴くこの音楽は、そんな精神を尊重しつつも、冷徹なリリシズムが感じられる演奏。
最初は“耳触り”と感じられるかも知れませんが、耳慣れるにしたがって惹きこまれていくディスクだと思います。