この直前に作曲されたop.32のチェロソナタは、楽器の高音部の美しさが活かされているとは思えず、難渋な印象を受けていたののですが、
この協奏曲は、随所に高音部の美しさが活かされているためか、清々しい魅力に満ちた作品と感じられます。
今日エントリーするのは、マイスキーのチェロとオルフェウス室内管弦楽団による演奏。
指揮者を持たず、オーケストラのメンバーによって自発的に演奏されたこのディスクは、
独奏者マイスキーとの自由で闊達な会話を楽しむかのような軽みを感じる中にも、深い味わいを有した、清々しくも魅力に溢れた演奏です。
冒頭部の独奏チェロによって奏でられる自由で闊達な高音は、満天に輝く星空へと羽ばたくように、美しいロマンに溢れたもの。
続く第2部は、穏やかな安らぎに満ちた雰囲気の中を、憧れに満ちた淑女の立ち居振る舞いを思わせるように奏でられる、チェロの雅な響きが印象的です!
突然吹き抜ける涼風を思わせるような爽やかさで開始される第3部は、恰も青春の息吹を感じさせるように、ロマンティックな表情を刻々と変化させながら活気に満ちて進行していきます。
オルフェウスによるこの演奏を体験してから後は、この曲のどのディスクを聴いても、かしこまった堅苦しさを感じるようになってしまいました。
この曲をお聴きになって、今一つだとお感じになる方は、機会があればオルフェウス盤を聴いてみてください。
フランス的とは言えないかもしれませんが、サン=サーンスの音楽の楽しさ、美しさが体験できると思います。