最近聴いたCD

I.ストラヴィンスキー:バレー音楽『ペトルーシュカ』 

ピエール・ブーレーズ指揮  ニューヨーク・フィル


魔術師によって人間の感情が吹き込まれた3体のパペット(「ひょっこりひょうたん島」や「プリンプリン物語」に使われたような操り人形)が繰り広げる恋物語と、その凄惨な結末を描いたバレー音楽。

見世物小屋の片隅で気の滅入るような生活をしているペトルーシュカは、美しいバレリーナに恋をするが、

彼女は豪奢な生活を送るムーア人に心を惹かれ、ペトルーシュカには目をくれようともしない。

そんな彼女を奪い取るために、ムーア人の部屋に押し入るが、逆に叩き出され、

市中を追い回された揚句に殺害されてしまう、

そんな内容が描かれたバレー音楽です。


【第1場】
 謝肉祭の市場が開かれ、人々で賑わっている広場の様子が活き活きと描かれた導入部
 ドラムの連打は魔術師の登場を表わすもので、突如見世物小屋が出現、
 魔術師によって生命を吹き込まれたペトルーシュカ、バレリーナ、ムーア人の3体のピペットが、楽しげなコサック風のダンスを踊りだして、劇中劇が始まります。

【第2場】
 ドラムの連打により、場面はペトルーシュカの殺伐とした部屋に…。
 訪れたバレリーナに惚れて、言い寄るペトルーシュカですが、すげなくされて怒りが爆発!

【第3場】
 再びドラムの連打で、場面はムーア人の豪奢な部屋に…。
 心の邪悪なムーア人のもとをバレリーナが訪れ、意気投合した二人は、仲好くワルツを踊ります。
 そこへ激怒したペトルーシュカが押し入りますが、逆にムーア人に叩き出されて…

【第4場】
 舞台は第1場と同じ市場の、黄昏時の情景が活き活きと描かれます。
 そこへムーア人に追われて見世物小屋から逃げ出したペトルーシュカが登場しますが、結局は人々の面前で惨殺されます…。
 死んだのはただの人形ですが、それにこめられた魂は、思いがけずもペトルーシュカの亡霊となって、見世物小屋の屋根に現われる!恐怖に怯える魔術師…。


今日エントリーするブーレーズ/ニューヨーク・フィルの演奏、

その当時聴いていたストラヴィンスキーの三大バレー曲の演奏の中では、

群を抜いて分かり易い表現と感じましたし、喜んで前衛芸術を受け容れることが出来ました。

それはブーレーズの楽曲分析が透徹していて、表現が明快だったからだと思うのですが、

ところが、この曲の様々な演奏を聴き慣れた今、あらためて聴き直してみると、

登場人物の詳細な描き分けに加えて、当時は気付かなかったアバン・ギャルドな刺激、

例えば、ムーア人の部屋に入っていくバレリーナの、軽薄で安っぽい華やかさ…

その場面に押し入るペトルーシュカの間抜けさ…

その他、邪悪さ、グロテスクさ、凍てつくような恐怖感等々…

それらが、大変に斬新に表現されていると思えます。

作曲された当時の前衛的な精神が、いつまでも廃らない、生涯聴き続けたい演奏の一つです!

ホームページへ