最近聴いたCD

外山 雄三:管弦楽のためのラプソディ 

沼尻 竜典指揮  東京都交響楽団


この曲を初めて聴いたのは、私がまだ中学生の頃でした。

TVで観ていたN響のコンサートで、アンコール曲が始まった途端に拍子木の音が鳴りだしたのに度肝を抜かれ、

それに続いて、聴いたことのある日本のメロディーが次から次へと登場するのには、

「なんじゃ、これ?」と思いつつも、心ウキウキ!

…賑やかに八木節で締めくくられた直後には、「この曲のLP、すぐに欲しい!」と大感激していたこと、今でもはっきりと覚えています。

尤も、クラシック音楽を聴き始めて間もない時期で、

当時、ファン必聴と言われた三大交響曲・三大ピアノ協奏曲・三大ヴァイオリン協奏曲すら殆ど聴いたことがなく、

さすがにクラシックの王道から大きくはずれた、外山雄三作曲『管弦楽のためのラプソディ』へ触手を伸ばすことはありませんでしたが…。

でもこの曲、その後もオーケストラのアンコールピースとして何度か耳にしましたが、その度に気分はノリノリ…、随分楽しませていただいたものでした。


この曲は1960年、NHK交響楽団の欧州ツァーに指揮者として帯同した外山氏が、アンコール曲として演奏するために作曲したもの。

沼尻竜典/東京都交響楽団の演奏で聴いた印象ですが…。


前奏部は、拍子木、鐘、和太鼓という打楽器だけで演奏されますが、「これから日本について紹介しますよ」というような、仰々しい前口上の趣です。

主部に入ると、トランペットが「あんたがたどこさ…」(肥後手毬唄)のメロディーを奏しますが、私達の世代にとっては、日常的に親しんだわらべ歌。

前奏が仰々しいだけに、曲想の落差に、思わず頬が緩んでしまいます…。

しばらくすると、ホルンによって「ソーラン節」が併行して奏されますが、この効果は実に懐かしい響きと映ります…。

「炭坑節」「串本節」と、祭りの情緒は盛り上がって…。

それが静まると鈴の音が響き、張りつめた静謐さの中でフルートによって奏される「信濃追分節」の、幽玄さを湛えた美しい響き!

再び拍子木が鳴って、最後は西洋のオーケストラが総動員された「八木節」で、盛り上がりは最高潮に達します。


海外初演時に好評だったこの曲は、その後も日本のオーケストラの海外公演時の重要なアンコール・ピースとしてしばしば演奏され、大変な人気を博しているそうです。

いつ聴いても懐かしく、思わずニンマリとしたり、幽玄さに居ずまいを正したり、そして最後にはノリノリの気分にさせてくれるこの曲。

お馴染みの旋律が唐突に登場してくるようですが、実は綿密に計算されたものだとか…。

未だお聴きでなければ、ぜひご一聴を!

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