新聞報道に対する検閲も強化されてきたために、
ジャーナリストたちはそれに対抗する手段の一つとして、
1899年には、フィンランドの民間に伝わる説話をまとめた民族叙事詩『カレワラ』を題材にした劇『歴史的情景』を上演することにより、
民衆を啓蒙して独立運動の機運を高めようとしました。
そして、この劇に付随する音楽の作曲を依頼されたのがシベリウスでした。
この劇付随音楽の中では、有名な『フィンランディア』が独立した作品として知られるようになりましたが、
作曲から11年後に、自身が抜粋して管弦楽組曲としてまとめたのが、『歴史的情景』第1番。
ところで今日エントリーする第2番は、第1番の続編として、その翌年新たに作曲されたもの。
未だ独立が果たせない中、それへの願いを込めて純音楽的な作品として書かれたものなのでしょう。
各々に標題が付けられた3曲は、嘗てのフィンランドに伝わる古き良き時代を描くことによって、穏やかに自国の独立を希む音楽のようにも感じます。
第1曲「狩猟」
夜明け、狩りへの出発、白銀の世界に舞う粉雪などの情景描写は、森の神秘を響きで表現したような趣!
大地に秘められた物語が髣髴されるような、幻想味に溢れた音楽です!
第2曲「愛の歌」
優雅な趣を湛えた冒頭部、ハープの響きに導かれて奏でられる美しい旋律は、穏やかさに包まれながら、心の内面へと静かに拡がっていくさまには、ささやかな幸福感が感じられます。
メルヘンティックでありながらも、滋味深さが感じられる音楽です!
第3曲「跳ね橋にて」
この跳ね橋は、城塞に架けられたものなのでしょうか。
子供の頃に見た、歩哨交代時のユーモラスな動きを思い浮かべる、こちらもメルヘンティックな音楽です…。
歴史劇に曲を付けた第1番とは異なり、嘗ての穏やかな祖国を髣髴させることによって、民衆を啓蒙しようとする音楽なのでしょうか。
それから数年後の1917年、ロシア革命の勃発に乗じて、フィンランドは独立国家であることを宣言したのです。