最近聴いたCD

A.ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調

M.ロストロポーヴィッチ(チェロ)
カルロ・マリア・ジュリーニ指揮  ロンドン・フィル


申すまでもなく、交響曲第9番『新世界』や弦楽四重奏曲第12番『アメリカ』と並ぶドヴォルザークの代表作。

アメリカからの帰国を間近に控えた、1894〜5年の初めにかけて書かれたもので、

祖国ボヘミアの音楽と、アメリカで耳にした黒人霊歌やインデアンの音楽を融和させた名曲として、高く評価されています。

協奏曲としては異例なほどにオーケストラが活躍すると言われますが、

とりわけ随所に登場する木管のソロは、自然の息吹を感じさせるような趣を有したもので、

曲の持つ郷愁を一層際立たせるように感じられます。


今日エントリーするのは、ロストロポーヴィッチのチェロ、ジュリーニ指揮するロンドンフィルの演奏。

独奏チェロと木管ソロの親密な語り合いから、限りなくイマジネーションが膨らむ演奏だと思うからです。


第1楽章、クラリネットによって不安で淋しげな第1主題が奏され、
ホルンの奏でる大らかな懐かしさを覚える第2主題へと続いていく開始部から、
いきなり望郷の念がつのってくるようです。
独奏チェロがそんな心情を吐露するかのように語り始め、
各楽器がニュアンス豊かにそれに応えながら、情感は高まっていきます。
聴きこむほどに味わいの深い楽章!

第2楽章時開始部は、木漏れ日を思わせる穏やかな主題がオーケストラによって奏され、
それを引き継いだ独奏チェロは、静かに思いを巡らすかのような趣が…。
中間部、突然強い望郷の念が湧き起こったかのようにオーケストラが強奏され、
最初にオーボエ、次いでフルートと対話する、独奏チェロの奏でる旋律の哀切を極めた美しさ!
そして、懐かしい日々を述懐するように語られる、チェロのカデンッオ!

第3楽章の第1主題は、ボヘミアの民族舞踊のリズムと黒人霊歌風の旋律がミックスされたものらしく、
気持が浮き立つような愉悦感に溢れた音楽。
帰国を間近に控えた、ドヴォルザークの喜びの心境が表現されているようです。
コーダ部で第1、2楽章を回顧するチェロの響きは、
沈みゆく夕陽を見ながら、懐かしい人の想い出を回顧するかのように、深い情感が湛えられています。


ロストロポーヴィッチには世評の高いカラヤン/ベルリン・フィルとの名盤があり、私もこの演奏に心酔して、LPを盤面が擦り切れるほどに繰り返し聴いたものでした。

ジュリーニ盤では、オーケストラの表現がやや地味であったり、第3楽章のリズムが弾まず愉悦感に欠けるなど、カラヤン盤で馴染んだ私にとっては不満な点はあるものの、

チェリストとオケのメンバーが互いの音を聴き合いながら、対話するように当意即妙に演奏されているのでしょうか…

これまで聴いたどの演奏からも体験し得なかった素晴らしい閃きが、随所に感じらるのです。

是非、じっくりと味わっていただきたい演奏です

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