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チャイコフスキー:ロココ風の主題による変奏曲 

M.ロストロポーヴィッチ(チェロ)
小沢 征爾指揮  ボストン交響楽団


ロココとは、「18世紀ルイ15世時代のフランスを中心に欧州で流行した美術様式で、

S字曲線や、異国趣味による優美さ・軽快さ・繊細さを特徴とする」とされています。

この曲は、チャイコフスキーが自作したロココ風の主題と、それをもとにした7つの変奏曲によって構成されています。


チャイコフスキー作品の中では印象的な旋律に乏しく、決して人気のある作品とは思えなかったのですが、

LP時代には、人気の高いドヴォルザークのチェロ協奏曲と組み合わされることの多い作品でしたから、

好き嫌いは別として、聴いたことのある人はかなり多かったのではないかと思います…。

もっともカップリングの理由が、独奏チェロとオーケストラのために書かれた有名曲が少ないことと、

演奏時間が10分台の後半で、メインのそれと合わせると60分前後と、LP1枚分としては過不足のない収録時間になるために、

フィル・アップ用に重用されたのだとか…。


この曲を聴くようになったのは、「変奏曲」というものに興味を持ち始めるようになってからのことでした。

何の変哲もない主題が、変奏を重ねながら、時に素晴らしい輝きを放つ楽曲に変化すること、

そして、曲の素晴らしさを紐解いてくれるのが、他の曲以上に演奏者の卓抜な資質であること、

そんなことが、おぼろげながら理解できるようになってからのことでした。


ロストロポーヴィッチのチェロと小沢征爾/ボストン交響楽団による演奏では、

雅な弦やホルンの響きに導かれて、独奏チェロが主題を提示する冒頭の部分、

その主題が、憂愁を湛えつつ美しく歌われる第3変奏、

第5変奏での慟哭するようなチェロのカデンッオ等、

変化の多様さと演奏の素晴らしさを堪能できるのですが、

ロココ風の主題が、ロシア民謡へと変化したような第6変奏では、その変貌の鮮やかさに、とりわけ大きな感動を受けました。

各変奏の特徴を的確にとらえたロストロポーヴィッチの演奏は、さすがに味わい深い素晴らしいものだと思います!

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