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アレクサンドル・ボロディン:
弦楽四重奏曲第2番 ニ長調

クリーヴランド弦楽四重奏団


この曲は、医科大学の公費留学生としてドイツに滞在中にロシア人ピアニストのカトリーヌと知り合い結婚したボロディンが、

出会いから20年となる節目の年に作曲に取り組み、僅か2ヶ月で完成、彼女に捧げられたものです。

第3楽章が、ロマンティックな情緒に溢れた「ノットウルノ(夜想曲)」として知られ、

“愛妻に寄せた、ボロディンの愛の想い出の曲”と言われますが、

その件について、ボロディンは一切触れようとはしなかったとか?

このような愛妻家の中には、時に単なる恐妻家と思しき人物が混在していること、これまでの経験上知っているもので、ふとそんなことも想像しました…。


第1楽章は、チェロが奏する懐かしさを覚える第1主題と、東洋的な異国情緒漂う第2主題が懐古的な曲想を醸す中、
繊細に紡がれていく楽器の音色は、様々な想い出を語るような趣を有したもの。
この楽章は、素晴らしいと思います!

第2楽章のスケルツオ部は、風に舞う枯れ葉を思い浮かべるような音楽。
ロシアンワルツには珍しく、上品で高雅な趣を有し、王侯貴族の舞踏会を思わせるのは、グルジア皇室皇太子の非嫡出子として生まれた血統のなせる技なのでしょうか。

第3楽章は、チェロが先ず主題を提示し、楽器や伴奏形を変えて繰り返される変奏曲?
それぞれの楽器が微妙に表情を変えながら進んでいくこの曲からは、若き日の想い出を懐かしむような感慨がじんわりと湧いてきます。

第4楽章、楽器間の問答は深刻な諍いを思わせ、決着のつかないままに曲は終わります。


私的な印象ですが、管弦楽曲も含め、ボロディンの音楽には、ロシアン情緒が横溢した演奏よりも、比較的あっさり系の演奏の方が相応しいように感じています。

これまできいてきた演奏から、どうやらその方が東洋的な異国情緒が漂い、懐かしさを覚えるような印象を抱いています。

この曲では、クリーヴランド弦楽四重奏団の繊細さを極めた演奏!

そこかしこにノスタルジーが漂う、素晴らしい演奏だと思います。

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