合唱・ピアノ・ヴァイオリンのための小品では、祖国の素朴な抒情を感じさせる、美しく魅力的な作品を数多く残しています。
特に第1次世界大戦が始まり、フィンランド国内が経済的に困窮状態に陥った頃に数多く書かれているのは、大作を書いても収入とは直結せず、「生活のために、出版社の求めに応じて書いた」ためだとか…。
ヘルシンキ社交界での享楽的な生活で体調を崩したシベリウスは、療養も兼ねて1904年に郊外のヤルヴァンパーに山荘を建て、その地で大自然や家族に囲まれて生涯を送りました。
そんな日々の安らかな生活の中から湧きおこるインスピレーションを、そのまま曲として綴ったような小品集!
これらの作品からは、肩の力を抜いた大作曲家の、難渋さの微塵もない、瑞々しい感性が感じられるのです。
今日エントリーするヴァイオリンとピアノのための『6つの小品』op.79は、そんな小品集の一つで、それぞれに標題が付けられているのは、楽譜の売れ行きを良くするための出版社の意向が絡んでいるのでしょうか?
第1曲「想い出」は、白夜に輝くオーロラの揺らぎと、燃えるような情熱が…
第2曲「メヌエットのテンポで」は、肩に力の入ったぎこちない動きが髣髴されるユーモラスな舞曲…
第3曲「性格的な舞曲」は、冴え冴えとした北欧の大気の中で繰り広げられる、緩急二種類の民族舞踊…
第4曲「セレナード」では、幸福感に満ちた若い二人の、屈託のない楽しげな表情が…
第5曲「田園舞曲」は、粉雪の輝き舞う風情が感じられます…
そして第6曲「子守唄」では、心地良い揺らぎのリズムに乗って、慈しみに溢れる音楽が…。
ピアノ小品集もそうなのですが、
ヴァイオリン小品集もまた、北欧の瑞々しいリリシズムに溢れた佳曲が多く含まれた、魅力的なもの…。
一例として、標題のついたop.79をエントリーしましたが、
ニルス=エリク・スパルスのヴァイオリンとベンクト・フォシュベリのピアノ伴奏によるシベリウス演奏は、聴くほどに滋味深いもの!
癒しの音楽として、お薦めできるものだと思います。