ドヴォルザーク(1841-1904)は困窮生活の中、1875年に長女を、1877年には次女・長男を相次いで亡くし、失意のどん底に陥っていたと言われています。
しかし、彼を高く評価していたブラームスの力添えにより、
1878年には、出版社からの要請でスラヴ舞曲第1集(全8曲)を完成させて大成功を収める一方、
民謡の要素をセレナードの様式に融和させた、『管楽セレナード』:の作曲にも取り組みました。
オーボエ、クラリネット、バスーン各2、コントラファゴット1、ホルン3、チェロおよびコントラバス各複数の編成で奏でられるこの曲は、
亡き我が子たちの魂の安らぎを願うかのように、悲しみの中にも、愛らしく穏やな慈しみに溢れた佳品。
二短調で開始される第1楽章は、
悲しみの中にも決してうつ向かない、毅然とした楽想が貫かれているためか、
その健気さが心に深い思いを刻む、印象的な行進曲風の音楽です。
第2楽章はパストラール風のメヌエット楽章。
穏やかな寛ぎや、深い慈しみの心が随所に感じられます。
プレストのトリオ部は、心の隙間に吹きこむいちじんの風のように、淋しさが過ぎります。
第3楽章は、夜の静寂に歌い交わされるような、美しく愛らしい音楽です。
それは、亡き子の天上での安らぎを願う心?
或いは、在りし日の姿を回想しつつ、愛おしさに涙する心?
いずれにしても、万感胸に迫る、素晴らしい音楽です!
第4楽章は、カーニバルを思わせる活気に満ちた音楽ですが、
中間部では穏やかさが訪れ、
コーダでは、第1楽章の主題が、懐かしさを伴なって印象的に蘇ってきます。
これを演奏するミュンヘン・プレーセルアカデミーは、国立歌劇場に所属する演奏家を中心に結成されたアンサンブル。
指揮者のプレツィーナについても全く知識はありませんが、
曲に秘められた悲しみが素直に伝わってくる、、鄙びた中にも美しく感動的な演奏を聴くことができました。