最近聴いたCD

ガブリエル・フォーレ:即興曲(全6曲)

キャサリン・ストット(ピアノ)


フォーレの作風の変遷を語る時、大きく初期・中期・晩年に分けられます。

初期の作品は、招請や拍節感が明確なために親しみやすいものですが、

中期になると、外面的な要素は次第に陰を潜め、急進的で簡素化された語法へと変化、

晩年には、難聴のために扱う音域も狭まり、半音階的な動きが支配的で、調性感は希薄となるために、ややもすると難渋な印象を受けてしまいます。


今日エントリーする『即興曲』(全6曲)は、シューベルトのように同時期に書かれて、曲集としてまとめられたものではありません。

ランダムに作曲されたもので、初期の作品が3曲、晩年のものが3曲。

そのために、前3曲と後3曲とでは、曲想は随分と異なっています。

尚、第6番はハープのために書かれたものがピアノ用に編曲されているために、

全集に加えられないことが殆どのために、これの入ったキャサリン・ストット盤を採り上げました。


混沌とした響きの中に芽生えの兆しを感じさせる急速部と、
滴り落ちるような瑞々しい感情が美しい緩徐部によって構成される第1番!

気忙しく動き回る急速部と、
緩除部の落ち着いた雅さが印象的な緩除部との対比が印象的な第2番!

曲全体が優雅さを湛えた第3番は、
滔々とした水の流れを思わせる急速部と、
水琴窟に滴る水の音を髣髴させる音楽!

初期の3曲には、こういったリリシズムが感じられます。


第4、5番については、音楽的には凝縮された中に複雑な感情が表現されているのですが、行き場のない魂の逍遙を髣髴するようで、個人的には難渋な音楽と、やはり感じてしまいます。

ただし、第5番に関しては、サンソン・フランソワの演奏に、妖しげな魅力を感じてはいるのですが…。


前述したように、ハープのために書かれた第6番は、虚無感の中に微かな希が明滅するような儚さを感じる音楽で、

フォーレの作品中でも、最も印象に残る一曲!

ディスク数も少なく、聴かれることは殆どないようですが、機会があれば是非ご一聴ください!

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