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ヨハネス・ブラームス:弦楽四重奏曲第1番Op.51-1

メロス弦楽四重奏団


ブラームスは、先人ベートーヴェンの9つの交響曲を意識するあまり、発表に際しては慎重になり、第1交響曲は着想から完成までに21年を要したという話は有名ですが、

弦楽四重奏曲でもベートーヴェンの16曲を意識するあまり、最初に発表されたOp.51の2曲は、完成までに最低でも8年を要したそうですし、

以前から書かれていた20余曲にものぼる習作は、すべて破棄されたとか。

それほどまでに、偉大なる先人の重圧を強く感じていたのでしょう。

ただ、3曲の弦楽四重奏曲は、交響曲のようにベートーヴェンに挑戦したとは感じられず、

先に書かれた弦楽六重奏曲やピアノ四、五重奏曲の延長として、若き日のブラームスらしい、瑞々しいロマンに溢れた作品との印象を抱いています。


弦楽四重奏曲第1番はまさしくそんな一曲なのですが、

今日エントリーするメロス弦楽四重奏団の演奏は、恰も白黒写真の濃淡から微細な色彩感の違いを感じとるような、趣深い演奏と感じられるのです。

第1楽章は、春の到来を感じさせる爽やかさが横溢し、

弦が鋭く刻むパッセージは、春の訪れを告げる風のような趣で、ボッチチェリーの絵画に描かれた「春の精」を髣髴します。

第2楽章は、穏やかな春の宵を想わせる音楽。
この楽章を聴くたびに「春宵一刻値千金」という言葉を思い浮かべてしまいます。
咲き乱れる花々の、むせ返るような芳しい香りが匂い立つ趣…

穏やかな舞曲を想わせる第3楽章。
楽章全体が、愛おしさに包まれたたおやかさが感じ取れます。

第4楽章は、親子が手をつないで散歩するような心が浮き立つ楽しげな主題、
それに続く変奏は、平和で穏やかな光景を想わせるもの。


モノクロ的な趣の演奏だからこそ感じられる色彩感があると思うのですが、

この演奏などはその典型とも言ってよいのではないでしょうか!

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