舞踏会の課題が「金と銀」で、
金銀の飾りで彩られた会場で、
婦人たちは思い思いの金銀をあしらった服装に身を包んで、踊りに興じていたとか。
高校生時代からウィンナワルツが好きで、クレメンス・クラウスやボスコフスキー指揮する有名曲をよく聴いていましたが、
青春の甘酸っぱい想い出と繋がる数曲を耳にすると、今でも感傷に耽ることがあります。
しかし『金と銀』は、そんな想い出と直接繋がることもないのに、
序奏部が終わって第1ワルツが登場すると、言いしれぬ懐かしさに鳥肌が立つてきます。
ボスコフスキー指揮するレハールのワルツ集(演奏はウィーン・J.シュトラウス管)のライナーノートには、
「シュトラウスの旋律はダンスへの招待であるが、
レハールのそれはダンスへの誘惑であり、
心を奪い、最も深い心情の中に憧憬や戦慄を喚起する」(小林一夫)
そのように書かれていありましたが、成程と合点しております。
エントリーする演奏は、ボスコフスキーがウィーン・フィルを指揮して1973年に収録したもの。
導入部に続き、それぞれが2つにわかれた第1、2、3ワルツ、そしてコーダによって構成され、
とびっきり豊かで美しい旋律に満ちたこの曲は、
ウィンナワルツ特有のリズムの魅力は申すまでもありませんが、
この演奏の最大の魅力は、曲が変わるごとに微妙に異なった雰囲気を醸す、場面転換の妙にあると思います。
何度聴いてもわくわくする、傾聴に値する素晴らしいワルツ演奏です!