シェーンベルクやベルクと並ぶ新ウィーン学派の中核メンバーとして、20世紀前半の楽壇で最も前衛的な作風を展開したと言われるウェーベルンが、
修業期の最後の1908年に作曲し、自らの作品と認めてOp.1を与えたのが、古いパッサカリア形式を備えた23の変奏とコーダを有する、この曲(但し2拍子)でした。
正直申し上げて、『パッサカリア』という題名がなければ、この曲が変奏曲とは考えもしなかったでしょう。
僅か10分強の中に凝縮されたテーマ提示・23の変奏・コーダが凝縮されたこの音楽は、
繊細で漂うようなニュアンスを保ちながら、生成するとすぐに消えながら刻々と移ろい行き、再び同じ瞬間が訪れることはありません。
パッサカリアという伝統的な変奏曲の形式を踏襲することによって、ウェーベルンが創造する色彩感に富んだ音色が、明滅するように儚く変化していくこの音楽は、大変に美しいものだと思います。
この曲を、是非ともカラヤン指揮するベルリン・フィルの演奏をお聴きになってみてください。
1974年に録音されたこの演奏からは、滑らかで豊潤な響きの中に、消え入りそうな儚さが聴き取れますが、
絶妙の呼吸と間合いによって生み出されたものではないかと思えるのです。
晩年カラヤンサウンドと呼ばれ、滑らかで豊潤な響きに拘った原点がここにあったのではないかと、ふと思った次第です。
超弩級の演奏だと思います!