大作『ウィリアム・テル』完成後は歌劇の作曲をすることはなく、宗教曲や小品を手掛けたくらいで、1836年には44歳で音楽界から完全に引退。
故郷のボローニャに引きこもりつつ、グルメが嵩じて以前からの夢だった超一流の料理人となって、後にはパリで高級レストランを開店したとか!
『弦楽のためのソナタ』(全6曲)は、原曲は2つのヴァイオリンとチェロ、コントラバスのために書かれた室内楽作品。
聴くたびに未だに信じられないのですが、1804年ロッシーニ12歳の時に書かれたものなのだそうです…。
エントリーする演奏は、クラウディオ・シモーネ指揮するイ・ソリステ・ヴェネティアの演奏。
第1、2ヴァイオリンが各5、チェロ2、コントラバス1の楽器編成です。
ヴィオラを外した理由は不明ですが、
我々が普段聴き慣れた中声部を欠くことにより、
アンサンブルに澄み切った清流のような透明感が漲り、
シモーネの颯爽としたテンポと相俟って、驚くような瑞々しさが感じられる曲に仕上がりました!
全6曲は、全て急―緩―急の3楽章構成として作られています。
どの曲も、第1楽章もソナタ形式によるものですが、
瑞々しく美しい旋律に加え、
ヴァイオリンが増やされたことでアンサンブルが引き締まり、
随所に後年の歌劇の序曲を髣髴する、湧きあがるような活き活きとしたリズムが印象的!
第2楽章(緩徐楽章)は、オペラのアリアを想わせる美しい曲が多く、
第2、3番のように、劇性に富んだ複雑な心情や人生の機微を髣髴されるものもあって、
とても12歳の少年が書いた内容とは思えません。
単に私の深読みに過ぎないのかもしれませんが…?
第3楽章は、明るく光り輝くような旋律に満たされており、
ここにも、後年の彼のオペラの旋律を想わせるものが登場します。
12歳の作品に、すでに彼の最盛期の音楽に聴ける個性が明確な形でうかがえるのも、興味深い所。
その一方では、サルバトーレ・アッカルド(Vn)他による原曲通りの編成の演奏は、曲のチャーミングな魅力に富んだもの。
ロッシーニの曲といっても、序曲以外は殆ど耳にしたことがない私にとって、そのエッセンスを感じさせてくれる魅力ある曲集なのです。