多分モーツァルトやブラームスの名曲のイメージが強いからなのでしょうが、朝冷えを感じる季節になるとクラリネットの音色が無性に恋しくなってきます。
ただ私の場合は、初秋の候になると必ず聴きたくなるのが、ウェーバーのクラリネットのための作品。
モーツァルトやブラームスは、もう少し秋が深まってから聴くことが多いようです…。
ウェーバー(1786-1826)は、ミュンヘンの宮廷楽団の名クラリネット奏者として活躍していたハインリヒ・ヨゼフ・ベールマンのために「クラリネットと管弦楽のための小協奏曲」を作曲しましたが、
この演奏に感動した当時のバイエルン国王の命により、1811年には第1、2番のクラリネット協奏曲が、相次いで誕生しました。
幼少の頃からドイツの自然や民族芸術と深く接触し、ドイツロマン派の先駆者と言われる彼の作風は、1821年に完成された歌劇『魔弾の射手』で全開するに至りましたが、
その10年前に作られたクラリネット協奏曲にも、その萌芽は十分に感じ取ることができます。
今日エントリーする演奏は、ザビネ・マイヤーのクラリネットと、ブロムシュテット指揮するドレスデン国立歌劇場管弦楽団によるもの。
第1楽章冒頭、これはいつ聴いても見事な演奏だと思います!
低弦のさざめきが、鬱蒼とした森の深閑とした雰囲気の中に漂うただならぬ気配を表出しており、
後年の『魔弾の射手』の序曲の冒頭にも相通じるような、ドラマティックな展開の予兆を感じさせるものです。
雅なオケの音色をバックに奏でられるマイヤーのクラリネットは、幻想の世界に浮かび上がる妖精のような美しさを感じさせるものです!
牧歌的な抒情を感じさせる第2楽章!
弱音で柔らかく奏でられるホルンと、クラリネットが溶けあう美しさは、まさに特筆ものと思います。
第3楽章は、森の中を飛び回る妖精のように、自由闊達で美しいクラリネット音色が満喫できます!
最近、ウェーバーの曲がコンサートで演奏されることがめっきり少なくなりましたが、
ドレスデン国立歌劇場のような伝統あるオケの演奏で聴くと、ドイツ初期ロマン派音楽が瑞々しく蘇り、その神髄に触れるような気がするのです…。