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J.ブラームス:ピアノ四重奏曲第1番 Op.25

ドーマス四重奏団
スーザン・トムズ(ピアノ)、クリシア・オソストヴィッチ(ヴァイオリン)
ロビン・アイルランド(ヴィオラ)、ティモシー・ヒュー(チェロ)


20歳を過ぎたばかりの青年作曲家ブラームスは、1855〜61年にかけて同時進行で2曲のピアノ四重奏曲の作曲に取り組み、ほぼ同時期に完成されました。

なお、第3番も同じ時期に着想されたのですが、こちらが完成したのは後年のことで、作品番号はOp.60が付けられています。


この時期のブラームスは、恩人であるシューマンの自殺未遂や、その2年後には死に遭遇する一方で、

彼の妻クララに宛てた手紙の親しげな文面からは、互いに恋愛感情を抱いていたことが窺い知れるなど、波乱万丈の日々を送っていたことが推察されます。

今日エントリーするのは、ト短調で書かれた第1番は、若々しい活気の中に緻密な抒情が盛り込まれた室内楽の名品。


冒頭、ピアノが淋しげにため息のような旋律を奏で、チェロ、ヴィオラ、ヴァイオリンが順に加わっていく第1楽章第一主題は、
若者が抱く青いメランコリーを想わせる瑞々しさに溢れたもの。
各楽器が奏でる揺蕩う旋律は、
青春の心の迷いを想わせる、いかにもブラームスらしい美しく印象的なものです。
終結部の、余韻を湛えた美しさも特筆もの!

第2楽章は、恰も現実に求め得ぬ幸せを、夢の中に求めて遊ぶ、そんな心情が描かれたような間奏曲です。

第3楽章は心穏やかに歌うように開始されますが、
突如感動にインスパイアされたように、意気揚々と飛び跳ねるようなリズムが登場します。
こんなに若々しく開けっ広げで喜びが溢れるブラームスの音楽、ちょっと思い当たりません…。

ジプシー風ロンドと名付けられた終楽章は、ブラームスが書いたハンガリア舞曲以上に、若々しくエネルギッシュな素晴らしい音楽です!


3種類の同曲異演盤を聴いた中では、ドームス四重奏団の演奏が、細部の繊細な表現と若々しいエネルギー感が表出された名演奏だと感じましたが、

同時にもっと多様な演奏で聴いてみたくなる、そんな奥深さを持った優れた作品だと思います…。

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