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クロード・ドビュッシー:交響組曲『春』 

ジヤン・マルティノン指揮  フランス国立放送管弦楽団


1884年にローマ大賞を獲得したドビュッシー(1862-1918)は、イタリア留学中の1886〜7年にかけて、芸術院に提出するために合唱と2台のピアノ版を作曲。

帰国後には2台のピアノと女声コーラス(ヴォカリーズ)を含むオーケストラ版に編曲しましたが、

「管弦楽曲に相応しくない嬰へ長調(サン=サーンス評)」

「漠然とした印象主義」などと酷評され、受理されなかったとか。

加えて製本所の火災により、原本が焼失。

現在の版は、ドビュッシーの指示を受けたアンリ・ビュッセルにより編曲されたもので、コーラスの部分は管弦楽化されています…。


曲は15世紀ルネサンス期の画家サンドロ・ボッティチェリの絵画『プリマヴェーラ(春)』を題材にしたと言われていますが、

確かに絵から受ける印象の如く、若々しく躍動する生命感や、匂い立つような草花の息吹に溢れた曲だと思います。

今日エントリーするのは、マルティノン指揮するフランス国立管弦楽団の演奏。

ロマン派の影響が残された作品と言われており、旋律の歌い回しをする演奏も多いように思うのですが、

マルティノンの演奏ではそういった側面は極力排除されているために、

芽生え始めた印象主義音楽の中にほのかなロマンの香りが残された、大変に初々しい秀作との印象が感じられるのです。


第1楽章は、寂寞とした大地に春の気配が漂い始めると、一気に春爛漫の世界が訪れます。

我々日本人の感覚にも共通する春霞を想わせる茫洋とした雰囲気や、

咲き乱れる草花のむせかえるような薫り、木々の若葉をそよがせる心地良い薫風等々…。

感覚的な愉悦を覚える楽想が満載された、心洗われるような音楽!

第2楽章は、生命を誕生させる根源的なエネルギー感と、それを慶び寿ぐような、舞曲を想わせる音楽…。

ロマン派音楽の残り香が漂うような、印象派音楽の名演だと思います。

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