20歳になったメンデルスゾーン(1809-1847)が初めてイギリスを訪れた際に、スコットランドまで足をのばし、
ヘブリティーズ諸島の中にある奇勝、フィンガルの洞窟で受けた感銘を音符に書きとめ、
翌年これを第1主題として使用し、演奏会用序曲として完成させたもの。
広大な海原と、ゆったりとした波のうねり、岩壁に打ち寄せては引くような趣を感じるこの第1主題は、
抒情的で、のんびりとした中にも、どこか侘しさや寂寥感が漂うもの…。
若い頃、見知らぬ土地に旅をした時の感傷と相通じるようで、言い知れぬ懐かしさが感じられる音楽です。
低弦で奏される第2主題の提示は、晴れ渡った爽やかさが広がる、
恰も一服の清涼剤のような音楽。
両主題が絡まり合いながら、刻々と変化する光や波を表現するように進行するさまは、
眼前に広がる光景を見るような素晴らしい音楽です…。
クレンペラー指揮するフィルハーモニア菅弦楽団の演奏からは、
この一幅の風景画から壮大なロマンが繰り広げられるような、そんなインスピレーションに溢れたもの!
超お薦めできる、メンデルスゾーン演奏です。