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アルチュール・オネゲル:交響曲第1番 

シャルル・デュトワ指揮  バイエルン放送交響楽団


オネゲル(1892-1955)の交響曲を聴くようになったのは、つい最近のことです。

それ以前に聴いたことがあった作品は、有名な『パシフィック231』『ラグビー』『夏の牧歌』といった管弦楽曲のみ。

ご多分にもれず、標題に惹かれて興味を抱いたからにほかなりません。

交響曲第1番に取り組んで完成されたのが1930年、作曲家が38歳の時と比較的遅く、

既に前述した作品や、交響的詩篇『ダビデ王』等において高い評価を得ていただけに、

満を持してこのジャンルに取り組んだと言われています。


第1楽章は、初めて聴いた時から驀進する機関車を連想させるようなエネルギー感に溢れた音楽との印象を持ちました。

機関車好きでも知られ、あの『パシフィック231』を作曲した人であることを考えると、まんざら的外れでもなさそうです。

エネルギッシュで、心地良いリズム感を伴ないながら、車窓の風景を眺めているようで…。


2楽章は、闇の中で蠢くような不気味さを感じる音楽なのですが、それは目一杯に蓄えられたエネルギーに漲ったものが醸し出す、一種のオーラのように感じられるのです。

そこから醸し出される緊張感に満ちた抒情!

上手く表現できませんが、彼の『パシフィック231』の冒頭部を例に挙げると、

目一杯蓄えられたエネルギーが放出されて車輪が動き始める、まさにその直前の緊張した瞬間と同質のもの、と申し上げればご理解いただけるでしょうか。

この異様なまでの張りつめた緊張感は、彼以外の音楽家の作品から受けた体験は、私にはありません!


第3楽章では、踊るような、時に爆発するようなエネルギー感が、終結部に向かって散逸してゆき、落ち着いた安らぎの世界へと収束していきます。

具体性に欠けた、観念的な表現しかできませんが、それは時代の危機に敏感であったと言われるオネゲルの出した、一つの結論とも考えられます。


個性的な音楽表現によって、時代へのメッセージを伝えようとした作曲家なのでしょうか。

彼の交響曲に関しては、今後もう少し聴き込んでいきたいと思っています…。

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