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サミュエル・バーバー:ヴァイオリン協奏曲 Op.14

ギル・シャハム(Vn)
アンドレ・プレヴィン指揮  ロンドン交響楽団


アメリカの作曲家サミュエル・バーバー(1910-1981)の名前を聞いて、殆どの人は『弦楽のためのアダージョ』を思い浮かべると思います。

すすり泣き、時に激しく慟哭しつつも、最後には清浄な諦観へと導かれていくようなこの曲は、

日本では映画『プラトーン』のテーマ曲として知られるようになりました。

アメリカでは、1963年に暗殺された、時の大統領J.F.ケネディーの葬儀に使われたことによって、一躍有名になったとか!

この曲に代表されるように、バーバーの作風はモダニズムや実験音楽には走らず、豊かな美しい旋律を指向したもので、

同世代のハワード・ハンソンやコルンゴールトとともに、「最後のロマン派」と呼ばれました。

今日エントリーするヴァイオリン協奏曲は、その呼称に相応しくロマンティックな曲想に溢れたもので、

1941年の初演時から高い人気を博し、現在もアメリカ国内で最も頻繁に演奏される20世紀の協奏曲の一つだそうです。


第1楽章は、開始早々ヴァイオリンが奏でる抒情的な旋律は、印象的なホルンの響きと相俟って、得も言われぬ異国趣味的な懐かしさを醸し出すように思えます。

リズミカルな第二主題にも、やはり異国情緒が…。

1936年、ローマ留学の際に地中海の港町に立ち寄ったのか、

その異国情緒には、ほのかなスペインの香りが感じられます…。

そしてクライマックスでは、大海原を髣髴させるような壮大な拡がりが…!


オーボエソロで開始され、様々な楽器に歌い継がれていく第2楽章は、

沈みゆく夕陽が徐々に周囲の光を失っていく、黄昏時を髣髴させるメランコリーな音楽。

この楽章のクライマックスも、晩秋の広大な草原の彼方に沈みゆく落日や、それに映える残照を見るような、実に壮大な音楽です。


前二楽章の抒情に酔った後の第3楽章は、ソリストの名技を披歴する音楽なのでしょうか。

快活で簡潔な音楽と言えば良いのでしょうが、これが終楽章というのは、前二楽章の内容と対比すると、余りにもあっさりし過ぎているようにも思うのですが…?

ただ、プレヴィンの指揮は、前述したようなほのかな異国情緒と、繊細かつ壮大な抒情が最大限に発揮された素晴らしいものだと思います。

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