実際には1813年の11月、シューベルト15歳の時に書かれ、初期の作品群に分類されるもの。
この時期までに書かれた弦楽四重奏曲は、家庭内での合奏を楽しむことを目的としたものもので、演奏は平易で伸びやかな楽想を有するもの。
後期の第13〜15番の弦楽四重奏曲から聴き取れる、明らかに死を意志を意識した屈折した心境の吐露は、微塵も感じられません。
ですから、これらの後期作品で感動を与えてくれる四重奏団の演奏が、必ずしも初期の作品に相応しいと言いきれないように思います。
今日エントリーするのは、シネ・ノミネ四重奏団の演奏。
室内楽の団体には疎いために、名前すら知りませんでしたが、
シューベルトの弦楽四重奏曲全集が格安だったために、一年ほど前に入手したのですが、これが思わぬお買い得品!
第1楽章は、秋の夕べを想わせる穏やかでややメランコリーな雰囲気の音楽。
シネ・ノミネの演奏は、早熟を感じさせる作曲家の楽想の中に、時折つむじ風のように初々しい感性が表出され、
この初期の作品から、シューベルトらしい得も言われぬ味わいが感じられます。
第2楽章は、粗野な踊りを感じさせる音楽。
中間トリオ部分では、幼い日の郷愁にも似た優しさとほろ苦さが…
第3楽章冒頭のゆったりと大きなフレージングは、まるで大きなため息のよう…。
夜、一人になって思い浮かんでくる、後悔の念なのでしょうか。
第4楽章は、モーツァルトを思わせるような軽やかに疾走する音楽。
第2主題は、人懐っこい愛らしさに、思わず頬ずりをしたくなるようなチャーミングな音楽です。
私にとっては、シューベルトの初期の室内楽作品の魅力に目覚めさせてくれた演奏!
歌曲以外にも魅力ある初期作品があることを、初めて知った次第です。