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ベーラ・バルトーク:ピアノ協奏曲第1番

アンドラーシュ・シフ(P)
イワン・フィッシャー指揮  ブタペスト祝祭管


バルトーク(1881-1945)が、1926年の8〜11月にかけて作曲した最初のピアノ協奏曲。

1906〜23年にわたり、同国の作曲家コダーイとともに、旧ハンガリー王国の民謡収集を行いつつ、

それらをピアノ用に編曲したり、その語法を科学的に分析して自身の作品に生かし、独自のスタイルをほぼ確立したバルトークでしたが、

それからの3年間は、蒐集した民族音楽の研究やピアニストとしての活動に重きを置き、作曲活動は殆ど行いませんでした。


そして、3年間の沈黙を破って発表されたのが、ピアノ・ソナタ、二つのヴァイオリンソナタ、そしてこの協奏曲第1番!

先鋭的な和声と、荒々しいまでの強烈な推進力を伴ないつつも、緊密な構造を持った作品を生み出しました。


第1楽章は、金管の野性的な咆哮と、ピアノを含む打楽器の強打による、息つく間もなくたたみかけるエネルギー感!

この冒頭部、それこそ3Dで観るスペクタクルな宇宙物のような印象を抱く演奏も多いのですが、

私は土俗的なエネルギーを感じる演奏に惹かれます。

農民たちの身振りや表情、遠くからは祭りのリズムが聞こえてくるし、各楽器の音色からは、熱く燃えたぎるマジャールの血が感じられるからです!


第2楽章は、夜の墓場のような空気が漂う音楽!
人魂が出てきそうな雰囲気…
独奏ピアノも含めてクレッシェンドする打楽器は、農民たちの怒りの爆発でしょうか。
楽章終わりの方で奏されるピアノのグリッサンドは、墓場に吹く不気味な風を髣髴させます!

休みなく続く第3楽章の激しい音楽は、戦いの舞を思わせるもの。
烈風吹きすさぶ中、雄叫びをあげるトランペットの響きは、勝利を告げる凱歌なのでしょうか…。


この曲には、豊かな民族色を湛え、荒々しいまでの強烈な推進力で演奏される、丁々発止として息もつかせぬゲザ・アンダとフリッチャイ/ベルリン放送響の歴史的名演があります。

これに異論があろうはずはありませんが、今日エントリーしたシフのピアノと、イワン・フィッシャー指揮するブタペスト祝祭管の演奏は、民族的な抒情が強く感じられる演奏。

とりわけ第1楽章の中間部での、農民たちの挙動までもが髣髴される素朴さや、

第2楽章での、マジャール人の怨念すら感じられる表現は、

この演奏を聴いて初めて得られた感慨でした…。

こちらも曲の本質をついた、素晴らしい演奏だと思います!

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