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フランツ・リスト:バラード第2番 ロ短調 

クラウディオ・アラウ(ピアノ)


バラード(譚詩)とは、中世に起源を持つ定型詩である一方、音楽の分野ではフランスの吟遊詩人によって歌われた物語歌を意味します。

これらは17世紀には一時衰退しましたが、18世紀になって復興。

ゲーテの『魔王』のような叙事詩的な作品を、バラードと呼ぶようになりました。

音楽におけるバラードは、一般的には題材を叙事詩に求め、歌曲や器楽曲として書かれたものが多いのですが、

リストの作曲したピアノ独奏用の2つのバラードの場合、作曲者は何も語っていないために、その内容については憶測の域を出ません…。


1853年、ピアノ・ソナタロ短調と同じ年に出版された第2番は、第1番と比較すると詩的で劇的な抒情が盛り込まれ、

規模こそソナタよりは小さいものの、壮大な物語を髣髴させる充実した作品です…。


情念が渦巻くような劇的で激しい情熱を湛えた第2番の冒頭部は、波乱万丈の展開を予兆させる音楽です。

これが治まると、対照的に天上に響く鐘のような、敬虔で清らかな音楽が登場します。

その後、決然として英雄的な行進曲風の楽想が登場し、嵐に向かって戦いを挑むような、激烈な音楽へと進んでいきます。

戦いが終息した後には、神々しい愛に包みこまれる、無常の喜びを湛えた音楽が…。

再び激烈な音楽が展開されますが、ここでは以前よりも止揚した気分を有する充実感が漲った音楽で、英雄的な誇りすら感じられます…。

最後は天上に響く祝福の鐘の音を響かせつつ、至福の感動を湛えながら、曲は終わります。


リストを得意とするアラウの演奏は、壮大な叙事詩を語るような、ロマン的な表現に溢れたもの。

「アラウは、具体的な物語に準じてこの曲を演奏した」との話を、どこかで聞いたことがあります。

リストの作品については、「誇大妄想的」との批評を耳にすることがありますが、

私の場合はそれに強く惹かれ、男のロマンと感じて親近感を覚えるのです…。

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