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アントニン・ドヴォルザーク:
弦楽四重奏曲第1番 イ長調 op.2 

シュターミッツ弦楽四重奏団


ドヴォルザーク(1841-1904)は、生涯に14曲の弦楽四重奏曲を書きましたが、

その内第2〜11番までは、彼が国際的な名声を獲得する以前の1870年代から80年代初頭の作品です。

ただ、傑作とされる第12〜14番は、

それから10年後、ドヴォルザークがアメリカの音楽院院長として祖国を離れ、アメリカに在住していた時期に書かれたもので、

第12番『アメリカ』に代表されるように、初めて接したネィティヴ・アメリカンや黒人の音楽に影響を受け、

祖国への望郷の念溢れる情緒纏綿とした美しい旋律で人気の高い作品群です。


しかしながら、今日エントリーする弦楽四重奏曲第1番だけは、

これらの作品が書かれた時期とは離れた1862年、ドヴォルザークが21歳の頃に作曲されたものです。

若き日のドヴォルザークが、祖国ボヘミアの自然と人々を描いた、随所に瑞々しい感性の迸りが感じられる作品を、

シュターミッツ弦楽四重奏団が、共感に溢れた素晴らしい演奏で聴かせてくれます。


第1楽章は、ボヘミアの自然と青春時代の感傷が、素朴に歌われた演奏…。

第2楽章の、野辺の送りを髣髴させる、素朴な悲しみに満ちた音楽は、親しい人との別れを描いたのでしょうか。

第3楽章は、軽快で愉しげなボヘミアの民族舞曲を思わせる音楽…。

終楽章は、ボヘミアの土俗的な旋律が随所に散りばめられながら盛り上がっていきますが、
終結部の穏やかで、残照を髣髴させる音楽は、あの『新世界交響曲』や『アメリカ』から聴き取れる、望郷の念に満ちた美しさが…。


ドヴォルザークはシューベルトと並び称されるほどのメロディー・メーカーと言われ、

楽想が湧きいずるままに五線譜にしたためる、天才型の作曲家といわれます。

弦楽四重奏曲第1番は、曲の展開にどことなく物足りなさを感じるのですが、

「それを補って余りあるほどの天才ぶりが感じられる作品」と言えるのではないでしょうか。

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