最近聴いたCD

フレデリック・ショパン:
スケルツォ第1番 ロ短調 Op.20 

クラウディオ・アラウ(ピアノ)


ショパンは生涯に4曲の『スケルツォ』を残していますが、

これらは
「深刻な内容の音型を執拗に繰り返すことによって、抑制することができないほどの憤怒や激情を表現した作品群」
と、位置付けられれているようです。


ショパン(1810-1849)若き日の、1831〜32年にかけて作曲された第1番は、

祖国ポーランドに侵攻し、ワルシャワを制圧したロシア軍への怒り、

それに反してワルシャワ市民が武装蜂起したものの、失敗に終わったことへの絶望感、

祖国に残された家族や友人たちの無事を願う抑え難い気持ち、

これらの深刻な感情が、作曲の背景にあったと言われています。


ショパンのスケルツォは、急―緩―急(A-B-A)という典型的な様式によって構成されていますが、

Aのスケルツォ部には、そのことを知ったショパンの率直な感情が、

Bのトリオ部分には、古くからポーランドで歌われていたクリスマス・キャロル『ねむれ、幼子イエス』の旋律が使われています。

ショパン若き日の情熱の迸りをどのように表現するのか、数多くの聴きごたえのある演奏が存在する曲でもあります。

私の所有するディスクの中でも、スケルツォ部の激情を抑制して、繊細な抒情を歌ったアシュケナージ盤では、

終結部で響く哀愁を含んだ旋律が、際立って感動的に聴こえてきます!

ポリーニ盤のスケルツォ部からは、言葉にも表現できないほどの心の動揺が、

そしてトリオ部では、茫然自失の心から自ずと湧きあがるように、祈りの音楽として響いてきます!


そんな中で、今日エントリーするのは、クラウディオ・アラウの演奏です。

彼の演奏するスケルツォ部からは、遠く離れた異国の地で祖国の窮状を耳にするもどかしさや、胸騒ぎのような感情が伝わってきます。

トリオ部のクリスマス・キャロルは、最初は素朴に奏されますが、やがては涙と祈りの音楽へと昇華していくようで…。

数ある名演奏の中でも、最も美しく、最も感動的な演奏ということで、挙げさせていただきました。

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