ベートーヴェンやロマン派の音楽に心酔していた若い頃には、「刺激の少ない退屈な曲」という理由から…。
還暦を過ぎた昨今は、「限られた人生!聴きたい曲がまだまだあるのに、今さら耳新しくもない曲を…」との理由からです。
最近は交響曲全集が、信じられないほど安価に入手できるようになりましたが、「どうせ聴かないだろうから」と思い、食指が動きません。
それでも、疾風怒濤期の代表作と、パリ交響曲以降のディスクは、ランダムにですが、ぼちぼちと買い揃え、今も思い出したように聴くことがあります。
今日エントリーするのは、カラヤン/ベルリン・フィルの演奏による『交響曲第87番』、
6曲あるパリ交響曲の中の一つですが、82番『熊』、83番『めんどり』、85番『王妃』のような愛称が付けられていませんので、あまり話題に上ることはないようです。
様々な楽想が次から次へと形を変えて登場するような第1楽章は、
家庭内での些細な出来事が、包み隠さず吐露されるのを聴いて思わずニンマリとするような、
開けっ広げで愉しい曲想の音楽です。
第2楽章での木管やホルンだけによる語らいは、
どこか牧歌的で、お伽噺を聴いているような趣を感じます。
第3楽章のメヌエット!
おおげさな表情をつけながら歩む、ゆったり且つのんびりとしたテンポ感は、
日常の生活リズムでは感得できない大らかさが滲み出た音楽です!
終楽章は、ハイドン特有の滑らかに旋律が転調していく軽快さと、
半休止によって時折流れが途切れる、その対照の妙!
カラヤン・ファンの方からお叱りを受けるかもしれませんが、彼の演奏から「味わい深さ」を感じた記憶が全くないのですが、
例外的にハイドン演奏からは、しばしばユーモアすら湛えた絶妙の味わいに、唸らされることがしばしば…。
その一例が、この曲の第3楽章のテンポ感と表情の妙!
めくるめくような転調と合わせて、ハイドン音楽の神髄かと感じています。