毎年今頃は、風呂上りに冷えた缶ビールを持ちだして、庭で夕涼みをしながらほろ酔い加減を楽しむのですが…
今年の夏はそんなことをしようものなら、逆に汗が噴き出す始末…。
もっとも、碓氷峠を越えた群馬県側では連日の猛暑日で、それと比べると文句は言えないのですが…。
早くも夏バテ状態に陥り、特にここ2日間は、ホームページを更新する気力すら出ませんでした。
「こんな不快な時期には、気分一新爽やかな音楽を…」と考えてその種の曲を聴けども、一向に更新意欲が湧きません。
そこで、「暑い時には熱いものを…」の譬えを思い出して、
これまで聴いた演奏の印象から、暑苦しい音楽の代表のように思っていた、チャイコフスキーの幻想序曲『ロミオとジュリエット』を、逆療法のつもりで聴いてみました。
ムーティ指揮するフィラデルフィア管弦楽団による演奏を聴くのは、今日が初めてのこと。
何ごとも、やってみなければ分かりませんね!
意外にもすんなりと、心地良い爽やかな感動に、暑さを忘れて受け容れることができました…。
申し上げるまでもなく、シェークスピアの戯曲に基づいて書かれたこの作品…。
交響曲第1番と2番の間に完成されたもので、「彼の管弦楽作品の最初の傑作」とも評されています。
修道僧ローレンスを表わす序奏は、もとより宗教的な神聖さが感じられる音楽ですが、
これほどまでに慈しみを感じながらこの場面の演奏は聴いたのは、初めてのことでした。
モンターギュ家とキャブレット家の諍い。
ムーティの指揮では、うねるような激しい感情表出によって、両家の抗争の激しさが描かれています。
どろどろと渦巻くような情念の表出とは一線を画したこの演奏に若干の物足りなさを感じつつも、
颯爽としたムーティの音楽に、どんどんと惹き込まれていくのです。
これに続くロミオとジュリエットのバルコニーでの、初々しく心ときめくような出会い、
そしてときめきが、やがて悦びへと高揚していく愛の表現!
そして、死に至る悲劇的な結末へ…。
彼の演奏からは、戯曲が持つ因縁的で悲劇的な側面は希薄に感じられ、
むしろ古い因習に囚われない若きヒロイズムが前面に押し出されているように感じられました…。
原作の内容云々はさて置いて、チャイコフスキーの幻想序曲には、ムーティの颯爽とした解釈の方が、私には好ましく感じられるのですが…。