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W.A.モーツァルト:ディヴェルティメントK.136 

ハーゲン弦楽四重奏団


『ディヴェルティメントK.136』は、モーツァルトがミラノから帰国後、イタリア式の三楽章形式で書かれた、初期の室内楽の佳作。

この曲の持つ南国的で屈託のない明るさは、7か月にわたるミラノ滞在の成果と考えられています。

16歳のモーツァルトの若々しい情熱が注ぎ込まれたこの作品は、『トルコ・マーチ (ピアノソナタK.331) 』や『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』と並んで、最もしばしば耳にする曲だと思いますが、

これら二曲ほど名前が知られていないのは、たんに馴染み易い標題名が付けられていないからなのでしょう。


この曲は弦楽室内合奏団の形式で演奏されることが多いようですが、弦楽四重奏、時にコントラバスを加えた弦楽五重奏でも演奏されるようです。

で、今日エントリーするのはハーゲン四重奏団による弦楽四重奏盤…。

コントラバスがない分、音のふくよかな厚みには欠けるものの、

少なくともこれまで私が聴いた弦楽合奏版や弦楽五重奏版よりも、表情の繊細な変化が素晴らしいと感じられたからです。

とりわけ第1ヴァイオリンのルーカス・ハーゲンの、自由闊達な瑞々しい演奏!


第1楽章の澄み切った青空を駆け抜けるような明るく美しい旋律は、シンプルではありますが、一度聴けば忘れることがないような印象的なもの。
展開部での、転調されてヴィオラが奏する影の部分は、晩年の深遠な世界を垣間見るような、そんな強烈な閃きが感じられました。

第2楽章Andanteでは、ハーゲンのメンバーそれぞれが、阿吽の呼吸で即興的に表情付けを行っている、チャーミングな魅力に富んだ演奏です。

第3楽章の簡潔かつ闊達な音楽は、スポーティーな愉しさに溢れた音楽。
展開部では僅かにフガーとが挿入されることによって、喜悦感がいや増す、いかにも若々しい音楽です!


モーツァルトの初期の作品でも、思いがけずとてつもない深みが感じられるパッセージに出遭い、感動を得ることがあります。

ハーゲンの演奏からも、モーツァルト16歳のこの作品から、そんな天才の閃きを感じさせてくれました。

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