最近聴いたCD

ガブリエル・フォーレ:ヴァイオリンソナタ第1番

オーギュスト・デュメィ(Vn)  ジャン=フィリップ・コラール(P)


フォーレ(1845-1924)が30歳を過ぎた頃、歌曲以外に取り組んだ最初の室内楽作品です。

結婚を誓ったマリアンヌ・ヴィアルドの弟で、優れたヴァイオリニストでもあったポール・ヴィアルドに捧げられた作品で、

幸福感に満たされた作曲家の心情が表現されているのでしょう。

フォーレの室内楽では、唯一長調で書かれたもので、

明るく伸びやかな旋律に溢れているせいか、彼の全作品中最も演奏される機会が多いものと言われています。


第1楽章は、愛らしいピアノの旋律をベースに、むせるような芳香を湛えた花々を思わせるヴァイオリンの音色で開始されます。
この楽章からは、夢が実在することの悦びを謳歌するような、青春まっただ中の幸せな音楽が聞こえてきます…。

第2楽章Andanteの幾分沈鬱な表情からは、若い頃に『若きウェルテルの悩み』を読んだ時にふと思い浮かべた甘美な死を夢見るような、
そんな魅惑的な妄想に酔ったような音楽と感じられるのですが…。

第3楽章は、無邪気さがはじけるような、愉しい音楽。
中間部のトリオには、僅かにメランコリーが忍び寄ります…。

第4楽章は、迸るような悦びに溢れた音楽。
曲の展開とともに、二つの楽器が奏でる恍惚とした陶酔感が高まっていくような…。


フォーレの音楽は、当時のパリのサロンで受け入れられたこともあり、「サロン音楽」と矮小化する批評も、少なからず存在していました。

確かにこの曲などは、採りようによっては、富裕層のための知的で高邁な遊び心を湛えた、いかにもサロン受けのする作品なのかもしれません。

しかしその一方で言われるように、フォーレの音楽からは、他の誰の作品からも体験することができない、現実を超えた高みへの憧れが聴き取れるのです!


デュメイとコラールの演奏からは、この曲の持つ若々しい情熱の横溢がストレートに感じられれる、曲想にピッタリのもの!

サロン音楽の域を超えた、名演奏だと思います。

ホームページへ