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マヌエル・デ・ファリャ:
バレー音楽『三角帽子』全曲

シャルル・デュトワ指揮  モントリオール管弦楽団


この曲は、ロシアバレー団の主宰ディアギレフの依頼で、スペインの作曲家マヌエル・デ・ファリャ(1876-1946)が、アンダルシア地方の民話を基に書かれたアラルコンの短編小説『三角帽子』をもとにして、1917年に作曲したバレー音楽。

物語の筋書きは、好色な代官が美しい粉屋の女房に横恋慕して、亭主を牢にぶち込んで自分のものにしようと企むが、逆に散々な目に遭わされるという、コミカルなタッチのドタバタ劇。

尚、『三角帽子』とは、代官がかぶる帽子のことで、権力を笠に着る人物を揶揄する意味合いが含まれています。


<序奏>力強いティンパニーの響き、「オシ!オシ!」の野性的な掛け声、悩ましげなメゾの歌声によって、たちどころにスペイン情緒に包まれます。

【第1部】
<午後>は、平和な田舎の生活がうかがえる美しい音楽。粉屋の夫妻のやりとりや、代官が女房を見染める場面にも、コミカルさが漂っています。

<粉屋の女房の踊り>スペイン女性の性でしょうか?言い寄る代官を適当にあしらいつつ、それでも妖艶さを誇示するようなダンスの音楽…。

<ぶどう>女房に迫りつつも、足を滑らして転んでしまう代官。それを助けるふりをして、代官を殴りつける粉屋の亭主。
ドタバタの後は、意気揚々と愉しげなファンダンゴが…。

【第2部】
<近所の人たちの踊り>は、けだるさを伴なったスペイン情緒が、宵闇に色濃く漂うような音楽。

<粉屋の踊り>での叩きつけるような激しいリズムがテンポを速めて、荒々しく終了すると…
『運命』第1楽章冒頭部がパロディーとして登場し、亭主が牢に送られる運命を予言!
ストレス・フリーな愉しさに満ちた音楽です。

<代官の踊り>での、粉屋の女房をものにしようとする間の抜けた行動の顛末は、バレーを見なくとも、音楽が全てを語っているようにも思えます!

<終幕の踊り>では、粉屋の服を着せられて表に出た代官が、警官や村人たちに袋叩きにあう代官の姿と、
祭りの盛り上がりが併行して進められ、
やがて大団円に向かって熱狂的に盛り上がっていく音楽は、
いかにもスペイン情緒が横溢した、素晴らしいもの!


初演者アンセルメの華麗な演奏で親しんだこの曲でしたが、

LPを手放してしまった今、もっぱら愛聴しているのはデュトワの演奏。

「民族色溢れる」という評価とは一線を画したものかもしれませんが、

リズムの素晴らしさや、木管の官能的な表情に惹かれて聴いています。

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