ロシアの民間に伝わる民話や民衆劇を題材にして、描写的で幻想味に溢れた管弦楽やピアノの小品を作曲しました。
その中でも交響詩『魔法にかけられた湖』は、森の奥深く佇む神秘的な湖や、それを取り囲む木々の表情の変化を描いた作品。
曲の冒頭、弱音器をつけた弦が奏でるさざめきの中、ハープのアルペジォや木管のソロが奏でる音色からは、
月明りのもとで滴るような深い緑の中、大気のそよぎによって湖面が波立つ様子や、
立ち昇る靄や木々のざわめきが、
絵画的というよりも、むしろ気配として描写されていると感じられます。
そのためかこの曲からは、自然界の描写もさることながら、作曲家の孤独な心境がより強く感じられるのです。
プレトニョフ指揮するロシア・ナショナル管の描くりゃードフの音楽は、過剰な感情移入のない、実に精緻で客観的な演奏。
そのために、作曲者が意図した色彩や陰影の微細な変化が、虚飾なく伝わってくるのでしょう、
聴き手にとっては、詩的で幻想的な、様々なインスピレーションに溢れた音楽と映るのです!
冒頭部の弦のさざめきは、ドビュッシーの音楽を思わせる透明な美しさが…。
木々のざわめきからは、ジークフリートが奏でる角笛の響きが、今にも聞こえてきそうに思えます。
折衷的で、中途半端な書き方しかできませんが、ロシア国民楽派の音楽の中では趣の異なった、なかなかの佳曲だと思います…。