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ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番 ハ長調

ピアノ:アルフレッド・ブレンデル
ジェイムズ・レヴァイン指揮  シカゴ交響楽団


1794〜5年にかけて作曲された、ベートーヴェン(1770-1827)二作目のピアノ協奏曲。

この曲以前に現在第2番とされている作品が完成されていましたが、その後も度々加筆されたために、出版が第1番より遅くなり、順番が逆転しています。

作曲された時期はそれほど違いませんが、作曲技術や曲の内容ともに、第1番は前作を下敷きにした分、よりベートーヴェンの個性が大胆に表現された作品と評価されています。

当時のベートーヴェンは、新進気鋭の作曲家ではありましたが、それ以上にピアノの名手として、ヨーロッパ中にその名を馳せていた存在。

その卓越した演奏技術を披歴するために、相応しい作品を自ら作曲しようとする意欲も大きかったと言われています。


今日エントリーするのは、ブレンデルのピアノ、レヴァイン/シカゴ交響楽団による演奏。
1983年、シカゴのシンフォニー・ホールでのライヴ録音です。

第1楽章開始部のオーケストラの響きは、肩の力が抜けたリラックスしたもの。
そんな伴奏に支えられたブレンデルのピアノは、

時にさりげなく、
時にわざとらしく気どった表情で、
時に夢みるように美しく、
いかにも若々しい自由闊達な表現が展開されていきます。

中間部、ライナーに「ハ長調から、遠隔調の変ホ長調へと転調する」と書かれた部分の崇高なまでの美しさは、もはやロマン派の作曲家の作品かとも思えるほどのもの。

更に、カデンツオでのブレンデルの演奏は、怖れを知らない、自由奔放な若者の姿を髣髴するような、若々しい魅力に溢れたものです。


第2楽章では、思いの丈を込めて奏でられるクラリネット、ホルン、ファゴット等の管楽器と、ピアノとの絡みが、親しみ深く、愛らしく感じられます。

いきなり自由奔放なピアノソロによって開始される第3楽章。

ブレンデルのピアノは、オーケストラをも自在に支配するかのように暴れまわりますが、

恰も「じゃじゃ馬馴らし」のごとく、宥めるように、或いはとりなすようにまとめていくレヴァインの巧みなオーケストラのコントロール!

丁々発止とした掛け合いがスリリングで愉しいこの演奏は、

新進気鋭の青年作曲家であり、押しも押されもしないピアノの名手ベートーヴェンを髣髴させる、見事なものだと思いました!

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