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エドゥアルド・トゥビン:
交響曲第2番『伝説的』

アルヴォ・ヴォルメル指揮  エストニア国立交響楽団


エストニア生まれの作曲家エドゥワルド・トゥビン(1905-1982)は、当初は自国の民謡に基づく民族的な音楽を作曲していました。

しかし祖国エストニアは1940年ソ連に併合され、1940-44年にはナチスの占領下に、1944年からは再びソ連に再併合(〜1991年)されたために、命からがらスウェーデンに亡命。

人口100万人の小国で10万人の同志を失ったことを知ったトゥビンは、亡命後は民族音楽の影響を離れ、重苦しく怒りに満ちた作風へと変化。

ソ連の支配下におかれた祖国に戻ることなく、生涯を終えました。


今日エントリーする交響曲第2番『伝説的』は、1937年に作曲されたもので、特定の伝説に基づくものではなさそうですが、エストニアの民族的な舞曲や風土が曲に色濃く反映されているように思えます。

第1楽章、凍てつくような厳しい自然を思わせる冒頭部に続き、バスーンの奏する語るような旋律は、オーロラ輝くもとで遥か遠い古を想うような、幻想的な懐かしい感慨に満ちたものです。
中間部は、ホルスト『惑星』第6楽章の「海王星」を思わせる、荒れ狂った野生的な舞曲の圧倒的な力強さ!
それが鎮まり、吟遊詩人の語る物語のような趣が感じられるピアノのソロが……

休みなく開始され第2楽章は、帝政ロシアの圧政下にあった時代の祖先の霊を想起させるような、重々しい葬送の音楽で開始されますが、
次第に悲劇は高まり、威圧的なまでの圧倒的な音楽へと発展します!

第3楽章は、ひたすら未来へと向かって驀進する蒸気機関車を思わせるような、エネルギー感に溢れた音楽。
それが静まり、ピアノと独奏チェロが奏する室内楽的な音楽からは、再びオーロラ輝く寂寥感に溢れた幻想的な光景が…。
陽光の温もりを感じさせる終結部に至り、漸く心が和んできます。


過剰な感傷を極力削ぎ落としたこの曲からは、エストニアの厳しい自然と、民族の力強さが伝わってきます。

敢えて本場物という言葉を使わせていただきますが、ヴェルメル指揮するエストニア国立交響楽団の演奏は、祖国の生んだ作曲家のこの作品の隅々にまで共感を漲らせた、新鮮で感慨に満ちた演奏!

20世紀の北欧が生んだ、素晴らしい交響曲の一つとと実感できる演奏だと思います。

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