その理由は、
数多くの「主義」や、実験音楽が幅を利かせた第二次大戦後の楽壇において、どこかで聴いたような懐かしさを覚えるカスキの音楽には、そういった斬新性が皆無であることに加え、
フィンランドに定住するピアニスト舘野泉さんによると、「フィンランドの知識人は感傷を恥ずかしがる傾向(価値感)があり、カスキの音楽を素直に評価することに抵抗を示すためではないか」と述べられています<ライナー・ノートより>。
そんなカスキのピアノ曲を、フィンランド国内はもとより、世界に向けて発信しているのが、ほかならぬ舘野泉さんなのです。
『夜の海辺にて<カスキ作品集>』と題されたこのディスクには、15曲の詩的な標題が付けられたピアノの小品と、1曲のフルート・ソナタが収録されています。
一粒一粒の音色がひんやりと滴るように涼しげで、光と陰の変化が絶妙に美しい「泉のほとりの妖精」。
迸るような感情のうねりを、谷川の流れに託して情熱的に歌い上げた「激流」。
ピアノの音色やリズムの変化が、月の光が降り注ぐ夜の森で生ずるトリッキーでファンタジックな現象を髣髴させる「森の精」。
思いっきりロマンチックな、この曲集のタイトルにもなっている「夜の海辺にて」。
そして、古へのほのぼのとした郷愁が滲み出るような「古い時計台」等々…。
真夏にお薦めの、清涼感に溢れた曲集…。難しいことは言わずに、一度聴いてみてください!