この物語は、
「不貞を行った妻を殺害した王は、すべての女性の人間性に不信感を抱いてしまい、
それからは、ベッドに迎え入れた全ての女性の首をはねてしまうという、残虐な暴君と化してしまいます。
そのことを知った大臣の娘シェエラザードは、自ら志願して王と一夜を共にし、王の興味をそそるように話を仕向けていきますと、
続きが聴きたいために、彼女の首をはねることを躊躇しているうちに、いつしか千一夜が過ぎていきます。
王はシェエラザードのお蔭で、いつしか女性に対する心の傷も癒され、彼女を正妻として迎え入れた後は、名君として国を統治するようになった」
そんなお話です…。
曲は、シェエラザードが語った1001の話のうち、4つがモチーフとして使われていますが、原本の内容に忠実というわけではなさそうです…。
民族色豊かで色彩感に溢れた作品を残し、「近代管弦楽法の父」と呼ばれるリムスキー・コルサコフの代表作と言われるだけに、この曲に関しては録音評価の高いディスクを選ぶ傾向がありました。
それに曲の内容からも、、私は一癖も二癖もある演奏を好んで聴いてきたように思います。
最初に聴いたアンセルメ/スイス・ロマンドの名盤はともかくも、
1964年録音のストコフスキー/ロンドン交響楽団の、ポルタメントやテンポの変化を多用し、鮮明に分離した楽器の音色がスピーカーから溢れ出るような、hi-fi録音と言われた演奏。
近年では、シェエラザードのテーマを奏するソロ・ヴァイオリンの身も心も清められるような清純な美しさと、
終楽章の船の難破シーンでは、全てが大瀑布に向かって流れ込んでいくような、スリルに満ちたエネルギー感に圧倒される、ゲルギエフ/キーロフ劇場管の演奏!
しかし、チェリビダッケ/シュトゥットガルト放送響の演奏からは、この曲にかくも多彩な内容が盛り込まれていたのかと、目から鱗が落ちる思いがしたものです。
第1曲:「海とシンドバットの冒険」では、大海原に漂う雄大なファンタジーに溢れた音楽が…
第2曲:「カレンダー王子の物語」のカレンダーとは、諸国を行脚する遍歴僧のこと。
ファゴット、オーボエ、ヴァイオリンと引き継がれる旋律は、とぼけた中にも淋しさを感じさせる、異国情緒に溢れた音楽。
中間部の荒々しい音楽は、彼らの武勇伝を面白おかしく語っているように思えるのですが…。
第3曲:「若い王子と王女」は、弦楽器が奏する旋律の美しく官能的なこと、それに加わるクラリネットやフルートのエキゾティックなムード、中間部の小太鼓のリズムに乗って奏でられるクラリネットは、どこか幻想的な雰囲気が…。
チェリビダッケはこの楽章に盛り込まれた多彩な音楽を、他のどの演奏よりも多彩に表現していると感じられます。。
第4曲:「バクダッドの祭り、海、難破、終曲」では、祭りの場での人々の熱狂と、難破という惨劇へと引き寄せられる、明暗相反する情景を見事なまでに描き分けられており、指揮者の表現力の巧みさを感じざるを得ない、渾身の演奏です!
語り終えられたあとに漂う余韻の美しさ…、素晴らしい演奏だと思います!