サッカー・ワールド・カップ南アフリカ大会決勝トーナメント1回戦で敗れはしましたが、日本チームの活躍のお蔭で、睡眠不足ながらも心地よい疲労感に包まれています。
そんな中、「エリザベス朝のヴァージナル(チェンバロと同じ機構を持つ鍵盤楽器)音楽名作選」と称された、普段滅多に聴くことのないようなディスクを取り出しました。
ルネサンス期のイギリスの作曲家、ウィリアム・バード(1543?-1623)とオーランド・ギボンズ(1583-1625)の鍵盤楽器作品を、グレン・グールドが現代のコンサートグランドピアノで弾いたこのディスク。
各声部のシンプルで美しい旋律が、ゆったりとしたテンポで十分に歌われ(グールド節?)、くっきりと浮かび上がってくる演奏からは、
メランコリーと儚さが立ち昇るのと同時に、滅多に体験できないような心からの充足感が湧きあがってきます。
究極の癒しの音楽と言えば良いのでしょうか!
16世紀にヴァージナルのためにに書かれたこれら作品が、グールドにとっての重要なレパートリーの一つとなっていたこと、ネットで調べて初めて知りました。
こんな感慨を抱きながら、ルネッサンス期の音楽を聴いたのは、初めてのことでした。
中でも、最も気に入ったのが、バードの『ヒュー・アシュトンのグラウンド』という作品。
感情の起伏を抑えた淡々としていますが、
コンサートグランドによる演奏とは思えない繊細な表情が素晴らしく、
前述した印象がとりわけ際立った、佳曲であり佳演であると思います。
私自身は、グールドのバッハ、モーツァルト、ベートーヴェン演奏には、どちらかと言えば違和感を覚える一人なのですが…、
しかしこの演奏からは、バロック期の音楽の瑞々しい抒情が、素直に伝わってくるのです。
騙されたと思って、一度お聴きになってみてください。