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武満 徹:弦楽のためのレクイエム

小沢 征爾 指揮  サイトウ・キネン・オーケストラ


1957年、東京交響楽団の委嘱によって作曲されたものですが、当初はそれほど芳しい評価は得られませんでした。

しかし、来日中のストラヴィンスキーがたまたまテープに録音されたこの曲を聴いて“very intense ”と発した言葉が、

メディアを通じて「絶賛した」と報じられたことにより(Wikipediaより)、俄かに注目を集め、武満徹の名を一躍世界に知らしめることになりました…。


氏自身がこの作品について、CDのライナーに

「はじめもおわりもさだかでない、人間とこの世界をつらぬいている音の河の流れの或る部分を偶然に取り出したもの」と書き、

更に、「題名を『メディテーション』としてもよかったのです…。瞑想という言葉が神への排他的な専心を意味するように、一物に専念したい僕の気持が、この題を選んだのです」とも述べています。


武満は作曲にあたり、音を組み立てて構築することには興味を持たず、一切の雑物を削ぎ落として、真実の音を追求した作曲家でした。

そのために、レクイエム或いは瞑想がテーマであるこの曲は、ストラヴィンスキーの言葉のごとく、聴き手に大変に厳しい印象を与える音楽。

武満はこの曲を書きながら、しばしば師であり盟友でもあった作曲家早坂文雄氏を憶い、その死を悼んだと述懐しています。


小沢征爾指揮するサイトウ・キネンの1991年の録音で初めてこの曲を聴いた時、曲中に安らぎが見いだせない、大変に悲痛な厳しい音楽だと思いました。

そして、この曲を愛聴することなど、到底できないと思いました。

そして今も、悲しみの涙を思わせるヴィオラのソロの響きに、僅かな癒しが感じられるものの、あまりに厳しすぎるこの曲は、しばしば聴く気にはとてもなれません。

それでも私は、武満さんの音楽は素晴らしいと思います。

既にエントリーしている『ノヴェンバー・ステップス』『ア・ストリング・アラウンド・ザ・オータム』でも書きましたが、一切の雑念を削ぎ落とした孤高の静寂の世界に、強く惹かれるのです。

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